スピリット~スタリオン・オブ・ザ・シマロン [DVD]
B.アダムスの「CDコレクションの一枚」としてサントラを買ったのが数年前、気まぐれにDVDを
買ってから、放置すること半月。それほど映画自体には興味が無かったのに、観始めたとたんに
思わず引き込まれてしまいました。
ありがちな「動物系アニメ」だと勝手に思い込んでいた訳ですが、馬に台詞を喋らせて物語を
進めるような安っぽい演出はなく、冷酷なまでに、馬はあくまでも馬として描かれています。
襲いかかる理不尽な運命に、一野性馬として激しく、時には黙々と立ち向かう主人公の姿が、
かえって熱い感動を与えてくれます。そんな彼の心情を写すように流れる、美しく壮大な情景
描写とBGM、控えめなモノローグ、それからB.アダムスの優しく力強い歌声が一体となって
語られる物語はまさに圧巻。
主人公と他の馬や野性動物たちが喋らない代わりに見せる、豊かな表情や感情表現、それに
人間たちとの触れ合いには漫画っぽさもありますが、それが物語全体に彩りを添えて、最後まで
飽きずに観させてくれます。
映像技術の進歩が著しい昨今ですが、6年前の作品とは思えないほどの圧倒的な存在感で、
最近の名だたる「話題作」の感動を一挙に吹き飛ばしてくれました。
以前のJJのように、ジャケットを見て「子供向け?」と迷っている人に一言。
ぜひ、騙されたつもりで観てみてください。
スピリット ~スタリオン・オブ・ザ・シマロン [DVD]
一見、ありがちな「動物アニメ」に見えますが、実際に観てみると予想とは大違い。
動物が喋りまくるような安っぽい演出はなく、馬はあくまでも馬として描かれ(まゆ毛は生えていますが...)、落ち着いたモノローグと情景描写、ブライアン・アダムスの語りかけるような歌声によって、物語は淡々と進められて行きます。一方で西部開拓民と先住民の自然観の違いを馬の目線で追いかけるという演出には、なかなか説得力があります。
「シュレック」と同時期に作られ、同じように3D技術を使いながら、それを前面に押し出すことなく手書きアニメの表現にこだわったことで、とても観やすい作品になっています。
とにかく壮大で美しい映画。次のような方は必見です:
馬好き、動物好き、ブライアンアダムスのファン、ウェスタン的雰囲気が何となく好きな人、手塚アニメファン、自然派、最近のSFXバリバリの映画に飽き飽きしている人、自由に生きたい人、人生に疲れている人。
Spirit: Stallion of the Cimarron
「Cuts Like A Knife」以来のファンでしたが最近の作品は勿論、これも聴いていなかった。ふとしたきっかけで聴いた曲に「これブライアン・アダムスだなぁ」と追い掛けたらこのCDでした。彼の持っている繊細な叙情的な面が全面に出ている秀作ですね。映画は観ていませんが聴くだけでStoryが判りそうなくらいの表現力だと思います。最近の作品も聴かなくちゃ駄目だなと反省してます。
Cimarron Rose
アメリカにおけるミステリーの最高峰、「MWA(アメリカ探偵作家クラブ)賞」’98年度ベスト・ノヴェル(最優秀長編賞)受賞作である。ジェイムズ・リー・バークは’90年度の同賞も『ブラック・チェリー・ブルース』という作品で受賞しており、本書で2度目の受賞に輝いた。
ハードボイルド小説の魅力はその主人公にあるといっていいだろう。本書のビリー・ボブはそれにまさにうってつけの人物である。41才の彼は、警察官とテキサスレンジャー(テキサス州公安局承認の半官半民的捜査員)を経験したのち、連邦検事補を経て、今はテキサスのとある郡庁所在地であるデフスミスという田舎町の弁護士だ。彼にはテキサスレンジャー時代に誤って相棒を撃ち殺してしまったことと、かつて愛した女性との間にできた子供が今は他人の子として成長し実の親子の名乗りを上げられないことの、ふたつの過去がある。
物語は、彼の悪を憎み正義を貫くため、頭に血がのぼり我を忘れるほど暴力にのめりこんでしまったり、それらの暗い過去の亡霊や曽祖父・祖父との血のつながりから、それではいけないという矛盾や葛藤を自身の中に抱え込み、みずからをストイックに律しようと苦悩したりする姿が描かれる。
事件は、くだんの息子が容疑者となったレイプ殺人、留置場から脱走した前科者が焼き殺される事件、保安官の惨殺事件などだが、息子の無実を信じるボブの調査や法廷でのシーンを通して、地元名士の親子の確執、胡散臭いメキシコ人麻薬捜査官、自分の過去と関りのあるらしい凶悪な前科者、ボブが恋心を抱く保安官助手、隣人の息子とのこころのふれあいなどのエピソードを交えながら、ボブの、われわれが常識で知る弁護士とは全然違う生き様を、深く、時には暴力的に、時には詩情豊かに謳い上げてゆく。
本書は、謎解きの興味は脇に置かれているものの、癒せぬ傷を抱えた男の誇りと哀しみに満ちた、読み応えのあるネオ・ハードボイルド・ストーリーである。