ジャーナリズムの政治社会学―報道が社会を動かすメカニズム― (SEKAISHISO SEMINAR)
「マスコミの力は、権力者の『正当性』という基盤を切り崩すことができる」、つまり「世論に影響を与える与えないという次元とは違ったアプローチがある」という説明が、とてもわかりやすかった。
ただ、ここでいう「正当性」というのは、何か具体的な存在としてあるものではなく、認識上の問題であり、権力者側が認識している「自らの正当性」と、世論が考える「権力者の正当性」という違いが、大きなバイアスとして影響するような気がするが、その点については触れられていない。というよりも自明のこととされているのか、もしくはそれほど大きな影響がないということなのだろうか。
たまたま本屋で手に取っただけだったが、一つ賢くなったような気がした。
あと、ゴーマニズム宣言とHIV闘争の賞を読んで、ゴー宣がただの右翼のマスターベーションではなかった時代のことを思い出した。
遺言―桶川ストーカー殺人事件の深層
「FOCUS」の記者だった筆者が桶川で起こった、いわゆる「ストーカー殺人」を独自に追いかけた記録です。この事件をきっかけに当時「ストーカー」という言葉が一気に人口に膾炙したのですが、この数年前にアメリカから入ってきた「ストーカー」という概念が、識者からの度重なる警鐘にもかかわらず、一向に定着せず、こういった痛ましい事件があって初めて認識されるという現実には、これからもまたきっとという諦めも付きまといやり切れない気持ちにさせられます。本書は半ば当事者である筆者が絶妙な距離感を保ちつつ事件の詳細と本質に迫るという、この手の本でできそうでいてなかなかできない立ち位置に見事に立ってみせており、その筆者の在り方自体が一読に値する稀有な一冊であるような気がします。
桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)
題名からは想像できないほど、凄く深い本です。
今まで読んだなかで一番凄いノンフィクションの一つです。
読み始めたらその壮絶な物語に止まらなくなりました。
この作者のすごい執念にひたすら圧倒されます。
そして、犯人、警察、マスコミ全てに憤りを感じます。
一番のハイライトは地道に、そして確実に犯人を追い詰めていく作者。
まさか、警察より先に犯人に行き着いてしまうなんて、本当に驚愕します。
読後感は、ひたすら呆然としてしまいました。
本当にお勧めです。