鬼神伝 龍の巻 (講談社ノベルス)
伝奇ファンタジー第二弾(三弾?)
前作は平安時代だったが、本著は鎌倉時代
今回は時代柄、刀がフューチャーされていた
人(貴族)と鬼(土着の神)の戦いを描いた作品なのだが、
実質的には人が召喚している仏と鬼が戦っている!?
そして、主人公が使役している「雄龍霊」が最終兵器!?
鬼神伝 (講談社ノベルス)
主人公天童純は密教僧である源雲に誘われ、人と鬼神が争う平安の世にタイムスリップします。そこで「選ばれし者」として貴族とともに鬼神と戦う事を求められますが、実は自身は鬼の子孫であり、人こそがこの戦いの元凶である事を知り、鬼神と共に貴族と戦う事を決意します。
この手の物語は人が鬼と戦うという形に描かれる事が多いと思いますが、本作はそのアンチテーゼとして描かれています。なぜ節分で鬼が豆を当てられるのか、桃太郎で鬼は本当に悪者なのか、具体的に物語を引用して、鬼が主人公に問いかける描写が頻繁に出現します。
一方、物語の構成としては極めて一般的な戦記物で、伝説の剣や主人公と共に闘うヒロインという舞台装置はそれほど目新しくはなく、また善悪の価値観においても単純に構図が逆転しているだけなので、せっかくの設定があまり生かされていないように感じました。これは残念ながら鬼や神などのキャラクターの描写があっさりとし過ぎていて、深くイメージを想起させるものではなかった事も一因かと思います。
とはいえ、本作が改訂版であり元々が児童書ということもあって、非常に読みやすく爽快感のある作品に仕上がっています。アニメ映画化が決定しているとのことなので、異形のキャラクター達がどう可視化されるのか、今から楽しみです。