裁かるゝジャンヌ クリティカル・エディション [DVD]
1928年にオリジナルネガフィルムがドイツウーファ社の火災により焼失し、完全なフィルムは存在しないと言われてきた『裁かるゝジャンヌ』。ドライヤーがオリジナルに使用しなかったフィルムで再編集しました(第二版)が、その第二版ネガも焼失。おまけに製作元は倒産。その後は、世の中に出回っていたポジフィルムをかき集めてかろうじて作品の体をなしていました。しかし、なんと60年近くも経って、製作直後にデンマーク公開のために送られていた完全オリジナル版がまったくの偶然から発見されます。その奇跡のようなオリジナルフィルムをDVD化したのがこのパッケージ。映画評論家のドナルド・リチー氏が、もう見ることが出来なくなってしまったと嘆いていた、ジャンヌが放血術を施されるシーンもきちんと収録されています。画質も極めて良好で、まことに貴重なDVD。ハピネットから出ているもう一つのほうは、オリジナル版ではありません。
映画は、良く知られているジャンヌ・ダルクの異端審問と処刑を描くサイレントの至芸。リアルさを追求するために、余分な要素を全てそぎ落とした映像が見事。音楽もなくタイトルも最小限、審問室や火刑場の全景も写さず、登場人物同士の関係さえ情報として観客に与えません。その上で、徹底したクローズアップ。ノーメイクで皺の一本一本まで超リアルな役者の表情。これを見せられると、私たちは、まず間違いなくファルコネッティ演ずるジャンヌに激しく感情移入します。シンクロします。そして、そのシンクロ状態で向かえる後半の火刑シーン。世の中にはなんという映画を作る人がいるのでしょう。ご自身の目で、是非一度ご鑑賞ください。