SPEC 警視庁公安部公安第五課 未詳事件特別対策係事件簿 DVD-BOX
堤幸彦監督×西荻弓絵脚本という『ケイゾク』の最強コンビによる作品、既にご覧になった方のレビューなど読むと、『ケイゾク的』とか『ケイゾクの続編などと言うな』とか『ジョジョ的な・・』とか様々でより一層興味が深まった。『ケイゾク』はDVDボックスから始まって、CD-ROMやCDあらゆる作品を持っているほどのファンなのだ。で『ジョジョ的な』と言われているのだからスタンド使いみたいなのが出て来るのだろう、と勝手に推測して観た。
観だすとこれはいい。感心することしきりになる。たとえばジェフリー・ディーヴァーのミステリーのファンなら誰でも知っている『ガスクロマトグラフィー』の実機が登場してくる。ジェフリー・ディーヴァーのファンだとか言っても現物を見たこなくちゃねー、と堤監督に言われているような気がしてくる。それ以外にも銃弾の打ち出しされるシーンは『マトリックス』を意識しているし、犯人が『スペック』を発揮するシーンなどはクリス・カニンガムがエイペックス・ツインのために創ったPVでの映像効果・音響効果を思い出させてくれる。つまり映像的に『濃い』部分で随所にディープなミステリー好き、ディープな映像・音楽好きを唸らせる要素が満載なのだ。すばらしい。
そして、堤監督という人はホントにキャラクタ作りが上手だと思う。その上にキャラとキャラの組み合わせによる予想不可能なシナジー効果を最大限に引き出す達人とも言い換えられるだろう。秀逸なキャラとキャラ、それらの織りなす化学変化のようなシナジー効果。それに巧妙なシナリオが加わればもうそれだけで観る『価値』があると言えるだろう。こういう作品は世界中探しても堤監督しか作れない気がする。
そして思うのは『ケイゾク的』というのは当たってないなー、ということ。『ケイゾク』は『ケイゾク』で閉じた世界で、『スペック』はどちらかと言えば『ジョジョ的』だと思う。戸田恵梨香が数える『スイヘイリーベ』はどこか『神父』の数える『素数』のようだ。
何しろすばらしい。観ていてワクワクする。堤監督はテレビ作品のほうがいいというのも他のレビューアの意見に多いようだがぼくも同感だ。絶対に観逃せない傑作だ。
Get A Life~Again~
映画“余命”〜君に届けいのちの想い〜の主題歌としてリリースされるtwenty4-7さんの“Get A Life〜Again〜”。
谷村志穂さんの原作を読み終わって、一部動画配信サイトで視聴できるこの楽曲のPVを聞いていると、もう胸が強く強く締め付けられて涙が止まりませんでした。
物語は結婚してしばらくたって夫婦に授かった小さな小さな命、しかしその命を授かった直後に主人公の女性に再発した乳がん、(癌が進行しても)出産を優先するか?(小さな命を犠牲にしても)乳がんの治療を優先するか?の選択を迫られた女性と夫の愛と感動の物語です。
MC MIKAさんが、人が生きること、人の強さ弱さについてこの楽曲を聞いている人に問いかけ・語りかけるように歌い、SINGER MEさんがそれについて答えるかのようにmelodiousに歌っています。
この物語・映画の内容をぎゅっと凝縮した楽曲集、多分twenty4-7さんの2人でしか表現出来ない楽曲の心の想いを感じ取ってもらいたいと思います。
冷静と情熱のあいだ(通常版) [DVD]
『手を掛けたな』という作品。美術の世界に生きる主人公と美しいハーフの女性の話。
エンヤの楽曲や、フィレンツェ、ミラノの風景を取り入れることでどこまでもスタイリッシュに仕上がった作品だ。
ドロドロした恋愛でもなく、かといって子供っぽい恋愛でもない。しっかりと社会人として働く二人の大人の物語で、そこに少しだけ幼さが見え隠れしている。青春時代の記憶を懐かしむ二人は、共にそれが青春期にしかあり得ない恋の形だと知っている。知っているのだが、それでも忘れることが出来ない。十年の時を越えて、約束を果たす瞬間、二人はまたかつての関係を取り戻すことが出来た。
竹野内豊とケリー・チャンは歴史ある舞台に負けない外見を持っているから、最後までバランスが崩れることなく演じ切れたのだと思う。少しでも、俳優の選択を誤れば、風景や音楽の方が登場人物よりも「美しく」なっていたかもしれない。
そういう点では、すんなりと見ることが出来たが、全体を通して主人公が大人し過ぎた気がする。これでは「冷静と情熱のあいだ」というより、「冷静八割に情熱二割」になってしまう。確かに「あいだ」ではあるが、せめて「冷静五、情熱五」でいってほしかった。
アウトレイジ オフィシャルガイド (日経BPムック)
3月9日〈日本時間10日〉にフランスから芸術文化勲章の最高章コマンドールを授与されるなど、現在(いま)や世界的な“マエストロ”と称され、カリスマ性が世界に浸透している映画監督・北野武。本書は、『BROTHER』〈2001〉、『座頭市』〈2003〉以来、7年ぶりにバイオレンス・アクションに挑んだ話題作『アウトレイジ』〈6・12公開〉のオフィシャルガイドブックである。
本作はヤクザ社会において金と権力を手に入れるためだけに権謀術数をめぐらすヤクザ同士の熾烈な権力闘争を描いた極悪非道な群像劇である。
今回、森昌行プロデューサーが北野武監督にとって久々の原点回帰となるバイオレンス作品を撮るにあたって一度リセットする意味でキャストを一新させた事に評価したい。大杉蓮、寺島進といった北野作品お馴染みの顔ぶれが登場するだけで食傷ぎみになる事があるからだ(もちろん両氏が悪いワケではない)。それともうひとつはキャストが一新された事により、他のドラマや映画で活躍する有名俳優たちを北野監督がどのように演出するのかも本作の見所だ。
ドラマなどではどこか繊細でひ弱な青年を演じる事が多い加瀬亮が切れ者の雰囲気を漂わせるヤクザ・石原を演じ、現在ではお父さんやサラリーマン役が多くなり、実に『悲しきヒットマン』〈1989:一倉治雄監督〉以来20年ぶりのヤクザ役となる三浦友和に会長の命に服従する若頭・加藤を演じさせ、そして何より注目させるのは『踊る大捜査線』の神田署長役で一躍人気俳優となって以降、いいひとを演じる事が多くなった北村総一朗に絶対的な権力を持つ狡猾な山王会会長・関内を演じさせる北野監督の心憎い配役に拍手を送りたい。
ちなみに北村氏は本作で初のヤクザ役と紹介されているが、実はその昔、刑事ドラマなどでよくヤクザ役や犯人役を演じてこられており、この度久しぶりにヤクザの親分をどこか生き生きと演じている氏を拝見して十分堪能した。