シュメル神話の世界―粘土板に刻まれた最古のロマン (中公新書)
有名なハンムラビ法典は、前1700年半ばに成立。それより千年以上前、およそ前3500から前2000年の間に、民族も言語の由来も不明なシュメル人が、ペルシャ湾に注ぐティグリス川とユーフラテス川の流域、メソポタミアの最南部で、川や海を使った交易と灌漑農業で栄え、多くの都市を建設。住民は、各都市の守護神を祀った神殿を中心として、都市生活を謳歌した。口承神話を独自の櫛形文字で粘土板に書き、それを教材に使い、粘土板本の図書目録さえあった。これらの出土資料と日常用具だった円筒印章に刻まれた神々の図から、神話が、読み解かれています。
後世他地域でも物語られた普遍的主題の神話○創世○大洪水○楽園○豊饒神○大地母神○英雄神の怪物退治等々が、他神話と比較しながら丁寧に説かれています。特に名高い「ギルガメシュ叙事詩」は、実は後世のアッカド語版で、シュメル時代の「ビルガメシュ神の英雄譚」との違いなど、細部まで研究が進んでいるのに驚きました。本書では、「創生」から「シュメル国家の終焉哀歌」まで神話が配列紹介されています。神話時代に産声をあげ、歴史の出来事として滅亡した都市国家の総体を見ることができ、始まった文明には必ず終わりがあることを諦観しながら確認できます。
シュメル神話が一つではなく、違う伝承があることを初めて知りました。またシュメル以後に栄えたアッカド人やアモリ人が、前代の高度の都市文明を排斥せずに、むしろ自国文明の中に導入したことが、神話の伝承に繋がったようで、中国・韓国・日本の文化継承の違いを思い起こしました。それにしても現代でも人の前に変わりなく立ちはだかる関門、どうせ死ぬんだから生に意味はないのではという人が前に進む心を砕く難題に対して、人は死すべきものであるからこそ何かをすべきだということを、人間が神話の中でとうに見据えていたことに驚きます。
名探偵ポワロ[完全版]Vol.30 [DVD]
久々に、すべてのレギュラーメンバーが揃って、それぞれの役割を果たしています。
一同揃った姿を見るだけでも、ここまで見ていたファンの私には嬉しいものがあります。
舞台となったリゾート地の景色も美しく、ワイドスクリーン一杯に広がった景色を眺めていると、TVの前に座っている私まで英国のリゾート地にいる気分になれます。
人物の描写も丁寧で、どんな場合であっても被害者に対する哀れみと加害者に対する厳しさをもっているこのポワロ像は、犯罪にたいするひとつの「目」として私にとってはこのドラマを安心してみていられる重要なポイントとなっています。
アラブが見た十字軍 (ちくま学芸文庫)
中世ヨーロッパ世界による聖地回復のための十字軍。
後のルネサンスから近代への発展へとつながっていく契機ともなった重要な歴史的事件であり、今でも「異教徒との戦い」に「十字軍」の名称が使われるくらい、ヨーロッパの精神史に大きな痕跡を残している。
日本における十字軍の受容はおもに西洋発のものであった。
学校の世界史の授業でも西洋からの視点で十字軍について教えられている。つまり加害者からの視点である。この書は被害者であるイスラム世界側の視点から描かれているという点で興味深い書である。
この書には西洋における十字軍の事情はほとんど語られない。
十字軍の提唱者であるウルバヌス2世の名はほんの一部、他の十字軍に関する書でよく取り上げられるフリードリヒ・バルバロッサやリチャード1世もわずかにしかでこない。この書で登場する西洋人はサンジル・ゴドフロワ・ボエモンといった実際に従軍し、現地に王国を築いた騎士たちの名である。
そして当時の中東情勢のおいて十字軍がどれほどの影響を持っていたかも知ることが出来る。乱立気味の東イスラム世界において十字軍は大きなインパクトであったことは確かだが、イスラム諸侯が一致団結して十字軍と戦うことは殆どない。イスラム諸侯間での集合離散、場合によっては十字軍勢力と結んで他の諸侯と戦う姿はこれまでの十字軍とイスラムの戦いのイメージを覆すものである。
十字軍というとどうもイメージ先行だった嫌いがある。
この書で当時のイスラム世界の情勢というものを知ることが出来た。
ジハードの戦闘的側面は近代において強調されるようになったというが、確かに十字軍時代には宗教的に強い動機を持つジハードが行われたわけではないようだ。
最期に題名の「アラブが見た」というのは内容を正確に表していないように思う。なぜなら、この時代・地域に登場する人々の多くはトルコ人・クルド人といった非アラブのムスリム勢力だからである。
四大文明 第二集「メソポタミア~それは一粒の麦から始まった~」 [DVD]
再現CGが素晴らしいです!!
文明を再現したCGの、立体的で動きのある映像には、既に滅びた遺跡の写真を見るのとは全く違うレベルの感動と理解があります。
文明が栄えていた頃をリアルに見ることが出来る貴重映像です。
古代エジプトうんちく図鑑
この内容の濃さでこのお値段は安い!と思います。
複数の本を読んでやっとわかってくるようなことがこの本一冊にぎゅっと凝縮されています。
エジプト神話の神々、歴代ファラオ達、エジプトの遺跡を発掘していった人達、著者のエジプト旅行記などについて
おもしろく読みやすく書かれているのですが、こんなに系統立てて読める本ってなかなか行き当たらないのではないでしょうか。
挿絵がとても丁寧に書かれていて、写真などは一切ないのですが、それを補うだけの作者の情熱が感じられます。
エジプトのことを知る最初の本として是非おすすめします。