るんびにの子供 (幽BOOKS)
怪異を書くことで、人間の「業」をあぶりだす。
大人でなければ書けない怪談だ。そして、読み手も人生経験を積んでいないと、この作品集に描かれている物語の恐ろしさはわからないかもしれない。
表題作も無感覚になることでしか自分の生活を守れない女が、怪異で気晴らしレベルの復讐に喜びを見い出す様になんとも薄ら寒い思いをして秀作だが、「石榴」と「手袋」の不気味さは砂に沈み抜け出せないが如き破滅に何をか況や。
「キリコ」は仕掛けが面白い。そして、二重の恐ろしさを含む。
「とびだす絵本」は「るんびにの子供」とは対照的に、怪異に飲み込まれる男を描き出し、女と男の本質的な違いを表現していて、作者の人間観察のするどさを思わせる。
次回作が期待できる作家だ。