プーランク:六重奏曲
プーランクの『ピアノと管楽器のための六重奏曲』が才気煥発、ギャランティに溢れまさに逸品というに値する。フランス6人組では最も「やんちゃ」だったらしいプーランク(ライナーノート)にとって、コンサートホールではなく、パリの街頭、ミュージックホールの音楽こそ本物だったのだという。
恥かしながら、この曲を今回初めて聴いたが、愉しく、時にセンチで時にドライ、「有頂天で」「とろりと甘く」「ユーウツ」などと確かに猫の目のように楽想および曲調の振幅が激しい。とは言え、そこはパリジャン(通俗的なイメージで申し訳ないが)、センス抜群という気がする。だから、激しい変化もマーラーなどの鬱陶しい感じは皆無である。比べても仕方ないけれども。シフリンのクラリネットが聴けるのも嬉しい。
ミヨーの『世界の創造』は室内楽版である。これは原曲バレエ音楽のほうが耳に馴染んでいることもあって、やや物足りない。原曲ではハインツ・レーグナーの分厚いオケの響きが忘れられない(ベルリン放送管弦楽団、1977年)。室内楽版はちょっと生命力が不足する。とはいえ、ピアノのプレヴィンは誠に上手だ。
サン=サーンスは普段ほとんど聴かない(聴きたくない)作曲家。これまたライナーによると6人組にとっては保守反動というより「往生際の悪い」作曲家だったようだ。
なるほど、そういうものか。しかし、プロフェッショナルだなあとは思う。
以上、本ディスクは、フランス室内楽のワンセットとしてまことにまとまったものだ。ミヨーはどうよという気もしないではないが。
なお、プレヴィンはヴァイオリニストのアンネ・ゾフィー=ムターと結婚している。娘より若い世代。才能があれば歳の差なんて。かの上原謙は、・・・。まあよろしい。
モンゴメリー・クリフト―エリザベス・テーラーの人生を狂わせた男 挽歌への旅路
著者の略歴を見ると1937年生まれ、法政大学中退後、新聞編集の仕事をし、1965年「食料新聞社」入社、1998年井上企画設立とある。いわゆる、業界の人ではない。
著者が「あとがき」で自ら言っているように「本書はモンティの伝記でもなく、評伝でも無論ない。言ってみればぼくのファンレターである。」との事である。
読み進んで行くうちに、確かにモンティのファンなら誰でも知っているような記述の多いことに気がつく。巻末に沢山の引用文献が挙げられているが、本書はそれらの文献からの引用、孫引きなどが多く、著者が足で調べた第一次資料がない。その限りでは熱烈なモンティファンが多くの文献を読み漁ってまとめたものに過ぎない。
私にとって目新しいことは、モンティがホモ、いや男女とも愛する両刀遣いだったというくだりである。これは私のモンティに対する思いを少なからず傷つけた。
モンティが隠遁生活を送っていたことはしっていたが、「陽のあたる場所」や「此処より永遠に」で馬鹿売れしたあと、「シェーン」や「サンセット大通り」「エデンの東」などの大役を蹴って、芝居に専念したというのも初耳である。アラン・ラッドのシェーンもひょっとしたらモンティがやっていたのかも知れない。
エリザベス・テーラーは「陽のあたる場所」でモンティと共演した後、人格的に破滅を辿るモンティを陰に陽に支え続けたが実らず、モンティは45歳と言う若さで突然死を遂げてしまったそうだ。
Elizabeth Taylor: My Love Affair with Jewelry
ダイヤ・ファー・シャンパン…元祖セレブ(という言葉はあまり好みませんが…)
の代表格、エリザベス・テイラーと、彼女のジュエリーコレクションの写真集です。
ブルガリ・ヴァンクリ・ティファニーetc…名だたるジュエラーの作品と、
それを着けこなす風格に溢れたリズの写真で埋め尽くされている
非常に美しい一冊です。
世代的に“エリザベス・テイラー”という名に特別な思い入れはありません。。。
が、やはり風格の差なのでしょうか?
現代の薄っぺらな“セレブ”とは一線をかくす存在感を感じます。
ジュエリー好きもしくはリズファンの方にオススメ!
ビューティフル・ウーマン
女性ボーカルの洋楽が聴きたくて、たまたまこちらを手にしました。
新しい曲も入っていて、先のレビューの方のご意見と重なりますが、
本当に色々な分野の曲があって、飽きさせません。
私は基本的にR&Bが好きなのですが、他のジャンルについては
聴かず嫌いというか、ただ何を聞けばいいのか分からないという、
洋楽初心者です。
そのため、このようなオムニバスというか、コンピというんでしょ
うか、様々なアーティストの曲を少しずつ、というアルバムをよく
聴くのですが、その中でも個人的には本当にイイアルバムだと思い
ました。
ダフィーの声に惹かれ、Utadaの曲の素敵さに開眼し、ガガ様の声
に聴きほれ。ファーギーも素敵だし、もっと聴きこんだら他のアー
ティストの曲にも魅力を感じそう。
まだ三回位しか聴いてないのですが、飽きずに聴けそうです。
こういうので、新しいアーティストさんを開拓します♪
洋楽初心者のため、大したコメントは出来ないのですが、魅力ある
一枚であることだけはお伝えしたくてレビューしました。
同じような初心者の方には特にお薦めかと思います(洋楽ベテラン
の方にどうなのか…あまりに無難なのか?分からないのですが…)。
クレアモントホテル [DVD]
今年上半期見た映画で最も心に残った一本。漸くDVD化され多くの方と感動を共有できるのが嬉しい。
原作は英作家エリザベス・テイラーの残した同名小説。長年連れ立った夫を亡くしたサラことバルフリー婦人は、ロンド
ンにあるクレアモントホテルに長期滞在することを決める。そこで同じく滞在する老年の同士達、ホテルの近くに住む小
説家志望の青年ルードことルードウィック等との出会いを通し生まれる様々なエピソードを描く、というのが概要。
中心となるのはサラとルードの交流エピソードだが、この二人は勿論脇役が皆個性派揃い。ホテルの常連客はもとより
ホテルのウェイトレス・荷物持ちまで癖ありだが愛すべきキャラクター達を英若手〜ベテラン俳優陣が力演、観終わった
後端役の些細な台詞・演技まで記憶に残るのは凄い。
クレアモントホテルに集った常連客達は初めは変わり者揃いに感じるが、作品が進むにつれ皆一癖ありながらも各々の
やり方で人生の夕暮れ時を謳歌する様子が見えてくる。その姿はこれから老いを迎える私に希望を与えてくれた。
ドラマ「Sex and the City」を愛し、色恋沙汰に胸躍らせ、ピアノに合わせて歌い踊る。しかもその生き様に品の良さと誇り
を忘れないところが素敵。
一方で本作は死と孤独というシリアスな側面をも描く。ホテルで起こるある事件は、家族があれ友人があれ、死ぬ際は誰
でも一人という現実を見せつけられるが、それに凛とした態度で望むある人物の潔さが美しく、自分自身このような覚悟
で死を迎えられるか考えてしまう。
サラとルードのエピソード内では、深夜にルードの部屋に二人きり、ルードが静かにギターを爪弾き彼女が愛する夫に
因んだ想い出のナンバー「For All We Know」を歌うシーンが思い出すだけで涙腺が緩む素晴らしさ。同ナンバーが再
度流れ出すとあるシーンでは、観た人の心にまで特別な曲として記憶に刻まれるかもしれない。
恋・老い・孤独・死…人間が老いる際に避けられないテーマを、コミカルとシリアスな展開をうまく織り交ぜて描いた秀作。
是非登場人物達の生き様にくすりと笑い、涙してください。