31km [DVD]
ブルーを基調とした美しい映像、スタイリッシュな演出、突き刺さるような迫力の音響効果。
しかし、ストーリー自体はありがちな亡霊が登場するオカルトもの。
映像表現的にはいわゆる「Jホラー」の影響をかなり受けており
(具体的に言うと「リング」や「呪怨」など)、見せ方は巧いものの
あまりにもオリジナリティが感じられず、見てて白けてしまうものがあります。
それでも「お化け映画」としては及第点のデキではあると思います。
かなりイヤな感じで幕を閉じるラストシーンが個人的には○。
ヨーロッパの刺繍手帖
読みものであってパターンブックではありません(間違えるとかなり悲しいのでご注意。)
ヨーロッパの刺繍にまつわる歴史的な話が7篇。合間に、現代のお店や作家さんのお話が
挟まっている、という構成になっています。
巻末には『刺繍スポット街めぐり』なるものがついていて、刺繍の完成品や材料を
買うことのできるお店が紹介されています。
きちんと章立てられている最初から順に読んでいくための本、というより
ページ順に読んでいくと話題があちこちへ飛ぶ、雑談のような『興味の赴くままでたらめ』さを持つ
つくりになっています。(もちろん目次はついていますが)
本の構成や情報の密度、小さめの本のサイズからしても、雑学的な小話の集まりという印象を受ける本です。
値段のことも考え合わせて、評価は3。
刺繍についておしゃべりを楽しむような、軽い気持ちで読むに良い本かもしれません。
追記:歴史に関するお話は『大塚あや子』さんから伺ったものだそうです。
パターンブックを出していらっしゃる作家さんなので、この本で刺繍に惹かれた方は
探してみると良いかもしれません。
スペイン伝説集
この本は、スペイン人のチャット友達から勧められて購入しました。
ベッケルという人は、スペイン人なら誰でも知っている詩人。
恥ずかしながら私は名前も聞いたことがありませんでした。
読んでみると、一つ一つの物語がショートショートのようで読みやすく、なによりもすべてが「ファンタスティック!」なのです。
千夜一夜物語ではありませんが、毎晩一話ずつ読んでいます。
イレーヌ (白水Uブックス)
俺を起すな、こん畜生、ろくでなしめ――意表をついた激越な調子で始まる本書。自動記述(オートマティック・ライティング)による不可解な文章が数ページ続いた後、「イレーヌ」という女性の幻影を追って浮世離れした挑発的なドラマが語られていく。
内面凝視の詩的独白あり、イリュージョナルな情景描写あり、霊妙神秘なる女体スケッチあり、生々しい愛欲シーンあり……。創意に満ちた絢爛たるレトリックを基調に、猥雑極まる口語、アナーキーな比喩、毒気あふれる諧謔を炸裂させた〈超誨淫の書〉だ。
序文を書いているシュール系作家A・マンディアルグは「独創性、非凡なイメージ、熱気、辛辣、激しさ、優しさ、色彩性、音楽性、さらに余裕と遊びの風情など、どれひとつとして欠けてはいない」と作品を讃え、その表現世界は大部分においてロートレアモンの衣鉢を継いでいると指摘。なるほど、「ミシンとコウモリ傘との……」で知られる、かの優美なる残酷の叙事詩「マルドロールの歌」を随所で彷彿とさせるものがある。
また、訳者の生田氏は「精神の自由と想像力の勝利を、それにふさわしい〈不埒な〉形式で高らかに歌い上げ」た作品と位置づけ、言葉のパロディーはロートレアモンほか、ランボー、ブルトン、スタンダール、コンスタンらにまで及ぶとしている。
この芸術的資質と俗物性の奇妙な混淆をみせる作品の珍味佳肴を盛った部分は、実際に読んで体感していただくほかあるまい。たとえば、こんな叫びを……イレーヌのえも言われぬ××××よ!