ザ・ゴール 2 ― 思考プロセス
前作「ザ・ゴール」の続編としてストーリーは展開しますが、今回は問題解決の思考技術についての内容です。
物語としては面白く読めるのですが、ビジネス書としては前作と比較し、多少劣る感じがします。
問題解決の思考技術についての本は他にも多々あるので、気軽に小説として読むのでなければ、今ひとつ物足りなく感じるかもしれません。
ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
題名の通り、企業の目的である利潤の追求、日程の遵守、従業員の満足感などを達成するための手法を論じた本。本書の特徴は、良くある経営のノウハウ本ではなく、物語仕立てにして、上記の解法を提示している点である。分厚い本だが、物語が良くできているので無理なく読める。
主人公は納期が危ない仕事のマネージメントを任される。この主人公の悪戦苦闘を通じて、解法が提示される。まずは、現状の問題点の分析である。そして、それに対する改善方法の考案である。その改善手法が上手く行く事によって、作業効率は上がるし、従業員の"やる気"も出て来る。これを継続的に行ない、作業を最適化して行く事が重要である。あれ、これって日本で行なっている「小集団(QC)活動」と同じじゃない。そう、物語を通して読むと分かるのだが、本書で述べられている事は、日本の多くの企業で既に採用している手法なのである。日本に対してだけ出版の許可が大幅に遅れた理由が分かる。
著者は日本企業を研究したのではないか。トヨタのカンバン方式とか。「カイゼン」という単語はそのまま英語でも通用するそうである。アメリカ方式の経営手法への自信の揺らぎを感じさせると共に、日本流の"従業員の向上心が企業を引っ張る"方式への自画自賛へと導く書。ただし、経営者レベルで考えると、日本はマダマダなのだけど。
スターバックス成功物語
顧客、投資家、従業員、社会全ての満足。多様性と規模という矛盾する課題。それらへの取り組みのbest practiceとして参考になるのは勿論だが、一番の魅力はこの手の本にありがちな「俺が」的ストーリーではなくパートナーの貢献を克明に書いているところ。というか、この本自体が彼らへの賛辞として書かれている。
一部翻訳に難あるが全体として文章に勢いがあるので厚さは気にせず一気に読める。可能ならばスターバックスに行ってコーヒーを味わいながら読むとさらに面白い。それが無理ならせめてコーヒー豆の匂いを嗅ぎながら読むと想像が広がる。
従業員を犠牲にして顧客サービス向上を説いているマネジメントは著者の爪の垢の代わりに、というのは誉め過ぎかもしれないが、自分で事業をしている人は勿論、大企業で人をまとめていく立場にある人、特に今迷っている人は一読して損はないと思う。
それにしてもスターバックスにせよシスコにせよ、今や米国企業の方がEmployees satisfactionに気を配って成功しているように見えるのは悲しい。