にごりえ [DVD]
明治おんなの生き様を、古い話として看過するのはたやすい。
けれど、生活であれ、恋であれ、夢であれ、秘めた情念のあり方
に時代の移ろいは無いものと知れる。
ほぼ樋口一葉の原作どおりにすすむ「にごりえ」の、杉村春子は
どうだ。白髪の老女役しか知らなかった私には、日本にこんなに
うまい役者さんが昔からいたのか、というため息をもたらす。
白黒邦画はほとんど擦り切れビデオの見回しなので、文化的価値と
してのDVDは貴重品ですらある。
たけくらべ 現代語訳・樋口一葉 (河出文庫)
「たけくらべ」「やみ夜」「十三夜」「わかれ道」「うもれ木」の現代語訳版が収められています。「樋口一葉の作品は読みづらい」「途中で投げ出してしまった」などという人も多かったので、現代語で出されたのは良いことだと思う。「たけくらべ」のみ文体は全く変えずに現代語訳してあるので(訳者の作品に対する思い入れが強いためらしいが)、そこは賛否両論あるかもしれない。樋口一葉を読みたいと思っている人はまずこの現代語訳版を読んでから原文に当たることをお薦めしたい。日本を代表する作家です。
にごりえ・たけくらべ (新潮文庫)
一葉さん(‘さん’でお呼びして失礼かも・・・)の小説の中で、最も写実的な描写が高い作品だと思います。
新開地、銘酒屋菊の井のお力を主人公としています。お力は真面目な独身の客・結城朝乃助をを愛していますが、自分のために零落して妻まで捨てた蒲団屋・源七の刃にかかって死んでしまいます。
源七には愛想づかしをしたわけではなく、源七とその家族のために別れたのですが・・・遊女になりきれない女の真情と深刻な現実をリアルに描いた作品です。
Jブンガク マンガで読む 英語で味わう 日本の名作12編
マンガと英語で近代文学を覗いてみる本。
明治から昭和初期の12作品が紹介されています。各作品には18ページずつ割かれていて、その18ページが更にいくつかの小部屋に分かれているので、どこからでも読めます。まるであらかじめつまみ食いされる事を想定しているかのよう。気軽に読める本ですね。
マンガと日本語と英語で粗筋が紹介された後、『キャンベル先生のつぶやき』という部屋では原文と英訳文が示されます。日本文学の専門家であるキャンベル先生が、英訳に際して感じたことなども書かれていて、敷居の低い本書の端倪すべからざる一面が垣間見えます。
文学の紹介本としてはかなり異色の一冊かもしれませんが、読み易いです。