愛と死をみつめて [DVD]
組織論の研究をしている途中で、組織社会学者の横山知玄氏が『現代組織と制度』文眞堂(2005)の中で、大島みち子氏に注釈で触れておられるのを知った。どうも気になるので、本DVDを購入し、鑑賞した。
何が、何ゆえに、絶望のうちにある人にすら生きる意味を与えるのか。苦しい現実の経験にもかかわらず、その現実に意味を与え、その現実を説明するものは何なのか。
吉永小百合さんの主演である。激しい痛みに耐えながら、明るく病院の電話に出るみち子。「時には 悲しい嘘をつかねばならない」。医師の推測する余命との一日刻みの戦い。恋人に話す電話の声。テーブルセンターの話題。「素敵な図案考えたから きっとマコのお気に召すのができると思うわ それからね お部屋のかた 昨日一人 明日一人 退院するの 急に寂しゅうなるから マコ どんどんお手紙ちょうだい」
最後に、宇野重吉さんが車椅子から、怒鳴ってくれた。泣かせてくれたね。私も東京オリンピック(1964)をテレビで見た世代だが、その年の芸術祭参加作品。当世のニタニタした時代にご不満のご同輩、是非、ご覧いただきたい。
怖いもの知らずの女たち
アラ還から70代前半の個性的な女性たちが
よくもまあ、集まったものだと感心。
その生き方がかなり丹念に書き込まれており、
たしかに女性たちへの応援歌となっている。
この年代の方たちがキャリア・ウーマンとして
よくぞここまで成功されたと思う。感服。
さすが吉永みち子さん、ウマイ!という表現
も随所に見られる。
しかし「シャンソン」「シャンソン」と歌って(?)
いる割りに、そのへんの書き込みはいたって少ない。
どんなボイス・トレーニングをしたのか、どんな
先生についたのか、どんなふうに曲選びをしたのか、
等々はほとんど書き込まれていない。
彼女たちの生き方をこれほど丹念に書いているのなら、
その生き方と、コンサートでの歌を関連づけて
書いてほしかった。
なぜ彼女はその曲を選んだのか、
その歌詞にどのような想いがあるのか、
歌い方にどのような想いが反映されていたのか等々。
そのへんが書かれていないと歌の本にはならず、
単なる元キャリア・ウーマンたちの生き方を
まとめた短編集となる。
果たしてコンサートのデキはどんなものだったの
だろう。登場人物の1人にでもいいから、歌に
対する真摯な想いを聞かせてほしかった。
性同一性障害 ―性転換の朝 (集英社新書)
埼玉医大の性転換手術以来,「性同一性障害」という言葉が世間に広く知られるようになり,それなりに情報は流通するようになった。
しかし,残念なことに,そのほとんどが,きちんとした根拠をもたない伝聞情報や虚偽情報であり,真摯に救済を求める当事者や,その当事者を理解しようとする一般の人たちを,かえって苦しめる結果になっている。
この本は,その種のたぐいの「トンデモ」情報とは一線を画すものであり,とくに著者の吉永みち子さんの丁寧でバランスの取れた取材には,敬意を表したい。
本書は,現時点でベストの「性同一性障害入門書」である。この本を読んだ後で,虎井まさ衛さんの著作や,医療・法律の専門家の著書に進むのがよいだろう。