Pain of Salvation - Be Live [DVD] [Import]
スウェーデンのプログレッシブ・メタルバンド、ペイン・オブ・サルヴェイションのライブDVD。2005作
彼らの5枚目のアルバム「BE」をライブで完全再現したもの。
当然のように、単なるライブ作品ではなく、映像にも気を配られたある種映画的な作品。
奥行きのある、まるで舞台のようなステージ上にはグランドピアノや管弦楽隊、中央には池まである。
バンドメンバーのみならず楽隊の面々も白塗りで化粧をした、一種異様な雰囲気の中演奏が始まる。
白い衣装で登場するダニエル・ギルデンロウ、マンドリンを弾きながら歌いはじめる。
パーカッションとマンドリンの音色に彩られた、およそメタルらしからぬ民族的なイメージの楽曲。
ピアノとストリングスの美しい間奏曲や、コンセプトに沿ったSEと映画的な映像などをまじえつつ、
演奏はときにはヘヴィに、あるいはプログレメタル的な変拍子を盛り込んでいきながら
全体的には楽曲はゆるやかに、粛々と進行してゆく。曲のコンセプトによって、
髪を束ねサングラスをしたり、ジャケットを着たりして役を演じながら歌うダニエルの姿は、
まるで舞台の主演男優のようだ。音だけでは伝わりにくいだろう曲のコンセプトとビジョンとが、
このDVD作品ではシアトリカルなステージと映像編集のおかげで、視覚と聴覚とがシンクロして感じられる。
楽曲単位としての爽快感や、演奏での見せ場がさほどないという点ではプログレメタルファンからすれば
やや物足りないかもしれないが…これが鬼才ダニエル・ギルデンロウの世界であり、
彼の中ではすでに表面的な音楽や曲の技巧うんぬんなどは超越しているのかもしれない。
人間の外面と内面をえぐるような、この音と映像によるコンセプト作は
テクニック、楽曲云々ではなく、内面に語りかけるプログレッシブロック作品として屹立している。
レメディ・レーン
スウェーデンのプログレメタルバンド、ペイン・オブ・サルヴェイションの4th。2002作
今やシリアス系プログレメタルのトップに躍り出た感のあるこのバンド、
4枚目のこのアルバムは、人間の内面を描き出したコンセプト作となっている。
3rd以降では歌の重要度が増し、1st、2ndの頃の意外性のあるたたみかけは若干減り
その分メロディや歌に深みを増した作風に深化しつつある。
このアルバムでも既成のプロクレメタルの概念にとらわれないアレンジが多く
ある意味ゴシックメタルにも通じるメランコリックな叙情から、キーボードを効果的に用いたり
変拍子リズムの上に乗るクールなリフや語りのような歌、一転して繊細かつメロウなギターメロディなど
コンセプト作でありながら前作よりも楽曲に幅をもたせている印象である。
おそらくサウンドの深化はすなわちリーダーであるダニエル・ギルデンロウの
「人間としての深化」にも大きく通じているのだろう。
こうしたレビューで数字の評価にはしずらい、スピリチュアルなバンドである。
Road Salt Two
個人的に70年代ハードロックは大好きだし、サウンドプロダクションはそれを踏襲してるんだけれど、いくら頑張っても残念ながらヘビロテにはならないんだなこれが…
演奏もダニエルの歌もとびきり巧いんだけど一本調子に聴こえる。英語がわかる方には前作と2作通して聴く意味合いがあるやもしれないが、私のように英語に疎く音でその良し悪しを判断する向きには前作と通して聴くのは辛いのではないか。
思うに、ジ .アンサーやライヴァル サンズが Zep を始めとする70年代ロックをほぼそのままなぞっているのに対し(悪いとは思わないが)POS はダニエルの作る歌メロはプログレハード時代そのままに楽器類だけここ数作で極端にその手触りを変えてきた。
結果 POS 以外何者でもない音はできたのだけれども、時折顔を出す彼等らしいドラマティックなメロディにクランチ気味の乾いたギターのバッキングは相性が悪く感じる。
ギター本来の音からかけ離れたドンシャリの深い歪みは嫌いだが、ダニエルの曲にはそういった大仰な音の方が合うようだ(初期〜中期の頃の音か)
おまけに彼の作る曲は近年歌メロより寧ろギターや鍵盤の類いが印象的なフレーズを紡いで、それがリスナーの心を捉えているものが多く、ここ2作は悪い事にあまりそういったフレーズを見つけられない。印象的なリフは70年代ロックを指向するバンドには不可欠、これはこの作風には致命的だ。
と、何かと悪く書いてしまったがダニエルが天才的なメロディメーカーだと信じて疑わないし、ハードロックという狭い括りに留まる才能ではないとも思っている。
ただ、この連作はふるいにかけて凝縮された1枚で事足りたのではないか?そんな思いだ。
ロード・ソルト・ツー
スウェーデンのプログレメタル、ペイン・オヴ・サルヴェイションの2011年作
スタイルとしてProgMetalから脱却し、古き良きロックの質感を押し出した前作の続編で
ダニエル・ギルデンロウの熱き歌声を中心にした、アナログ感覚あふれるサウンド。
70年代的なオールドなギタートーンと、どことなく土着的なシンセの旋律、
プログレッシブというよりはヴィンデージ調のロックという言葉がぴったりとくるような。
プログレメタルのファンではなく、間違いなくオールドロックのリスナーが歓喜する音だろう。
血の通ったロックへの回帰、それがダニエルの目指したコンセプトであるなら、
完璧なまでになし遂げた白と黒の2枚と言えるだろう。時間の流れを超えた力作である。