人生劇場 飛車角と吉良常 [DVD]
三島由紀夫が鶴田浩二のベストアクトとした作品が二つある。
一つは「博打打ち・総長賭博」。そして、もう一つが本作である。
内田吐夢監督の演出はさすがで、安心して見ていられる傑作である。
尾崎士郎の「人生劇場」は何度も映画化されているが、一番有名で、よくできているのも本作だろう。
この作品は鶴田浩二の他にも、高倉健、若山富三郎、藤純子、左幸子らの当時のオールスターキャストであり、その点も楽しい。
鶴田も高倉健も、飛車角や宮川はかつて演じたことがあり、演技が安定しているのもよい。
この映画が不思議がられているのは、ラスト近くの殴りこみシーンでかつて内田監督作「宮本武蔵」のようにモノクロになる点と、実験映画のような不思議な終わり方をする点だが、私はそんなに気にはならなかった。
東映任侠路線のはしりとなった名作であり、多くの人に味わって欲しいと思う作品である。
人生劇場 [DVD]
尾崎士郎の同名小説はかなり映画化されていますが、これもそのひとつ。大正の青春時代をそれぞれに生き抜いた瓢吉(竹脇無我)、吉良常(田宮二郎)、飛車角(高橋英樹)、宮川(渡哲也)を中心に、愛する女性がからみます。167分の長編は、ただストーリーを追っただけという感じがなきにしもあらず。
なかでも田宮二郎の吉良常が一番よく描かれていると思いました。それに演技も光っています。シーンは少ないけれど、瓢吉の父親役の森繁久弥はさすが貫禄充分。
セットの安っぽさが気になりました。だって大きな岩が振動で震えたりしているのですから。
それと作品とは関係ないですが、画質の悪いこと。おまけにリピート機能も省略されているので、同じシーンを繰り返し観ることができません。これで4000円近くとは松竹さんもあこぎやなあ。