カリガリ博士 [DVD]
この作品は、おおよそ80年前の無声白黒だからこそ生まれた
最高傑作だと思います。
初めて観た時は「えっ!これがホラー」と拍子抜けしましたが、
なんのなんの、視点が代わればドイツ表現主義の頂点だけありました。
回想シーンからなる映像は、芸術性の強い書き割りのセットが、
見事なまでに不安定な空間と相反するスピーディーなスーリー展開に
不思議と素晴らしく調和し、写楽を感じさせる表現豊かな俳優の目は、
観る物を引きつけ恐怖へと誘います。
ストーリーもさることながら、アートに興味のある方は是非に
観てもらいたいおすすめの作品です。
カリガリ博士 新訳版 [DVD]
超名作!表現主義に触れるならば、この作品が良いでしょう。
全ての映画の異様な美しさはこの作品から来ているといってもいいでしょう。
退廃美の原点です。ホラー映画の親といってもいいでしょうか?
チェザーレが異様なんです。表情とか普通じゃなくて不気味です。
(チェザーレなんか、スラッシャーホラーの原点的存在といえるかもしれません)
建物とか、空間が全部歪んでいて、観ているこちら側を不安にさせます。
光と影を巧みに使い、とくに影の深みが素晴らしいです。
全体を深い闇が支配しています。
舞台美術やあらゆる芸術ジャンルに影響を与えているようです。
全てが歪みきった狂気の沙汰です。
是非、もっと綺麗な映像で観てみたいです。
、、、
この様な超名作を500円で発売してしまうという、このレーベルの精神は素晴らしいです!
ただ、(安いとはいえ)高級感が全く無いのが残念です。
ホラー映画の世紀 (別冊宝島 1577 カルチャー&スポーツ)
自分はホラー映画が好きだけれどもそれほど詳しいわけではないので、とても興味深いラインナップだと思った。作品紹介に写真がかなり載っているのはうれしい。そして、なによりこの価格でDVD2枚付きは非常にお得だと思う。タイトルは知っていたけど観たこと無い作品だったので、いい機会になった。ただ、自分の好きな作品が入っていなかったので、星マイナスひとつ。
死神の谷 [DVD]
谷にある村に高い塀の居場所を築いた死神。この死神に婚約者を連れて行かれた女性が彼を捜し求めて死神と対峙するというストーリー。前半の死神の築いた塀の前に訪れる死者の群れや、ローソクの間で死神と向き合う主人公の女性シーンは幻想的で美しい。「メトロポリス」でアバンギャルドな映像を打ち出したフリッツ・ラング監督がこの作品では幻想的な映像に誘ってくれる。
死神と主人公の女性の思いに絡めて展開する愛と死という永遠のテーマを表す3つの冒険(オムニバス的な作風)は古典的な悲劇(ある種シェークスピア的なあるいはギリシャ神話的な)ではあるものの、そこに現れる人々の前向きな生き様は主人公の婚約者に対する思いを完全に表現する。
そして、死神の与えた最後の試練は永遠のテーマであり、どの映画作家も追及するテーマでもあるが、これだけ直接的に観る者に突き付ける作品はない。
この作品のもう一つの面白さは、サイレント時代の貴重な作品であるだけではなく、20世紀初頭のヨーロッパのアジアに対する見方が実感できるところ。3つの冒険はアラブ、イタリア、中国で展開されるが、特に中国の描き方(中国人をドイツ人が演じているところも面白いが)は中東とアジアの混在する世界になっているところは当時のヨーロッパから見た不可思議な東の世界がはっきり現れていて面白い。フリッツ・ラングもサイレント時代の作品としては「メトロポリス」とならぶ衝撃的な作品であることは間違いない。
ところで、このDVDで観る限り映し出される映像が正方形であるところが不思議だ。フィルム映像を観たことがないのでわからないが、何故この形なのだろうか?