二人の彼
残念ながら、個人的には今ひとつな内容でした。
先に良かったところを書きます。
デビューアルバムの『会いたい』に比べて、ずっと歌声の安定感が増し、力強さも加わって、ボーカリストとしての成長をはっきり感じさせてくれる一枚になっています。アルバム全体のアレンジメントも前作より統一感があり、藤田さん独自のスタイルといったものが確立されつつあるのが分かります。
収録曲の中では、切なさの際だつ『運命の人』がやはり詞・曲ともに抜群に素晴らしい。『未来を』もいい曲です。前向きなアップテンポの曲ですが、それでいて藤田さんらしさを失っていないところがいい。
で、このアルバムのどこが不満だったかといえば……曲のバリエーションの少なさ、これに尽きます。引き出しの乏しさといってもいいでしょうか。
具体的には、“あなたが好き、そばにいたい”という内容の曲が、アルバム12曲のうちほぼ半分を占めています。『運命の人』は名曲ですが、それとほとんど同じテーマの曲ばかりだとさすがにワンパターンになり飽きてしまいます。アーティストとしてこの方向で押すのもそれはそれでアリだと思いますが、それならもうちょっとそれぞれの歌詞に変化や工夫が欲しかった。
また、他に3曲ほど、日常生活をスケッチしたような曲がありますが、この詞がつまらないです、率直に言って。“朝に目が覚めない”とか“彼女はきまぐれだ”とかいうことをただそのまま歌われても、ただのグチにしか聞こえず、あまり共感は得られません。なにかもっとユニークな視点なりメッセージなりを含めないと、曲として成立しないでしょう。
私は前作『会いたい』を聴いたあと、ミニライブに足を運び、メジャーな曲をひととおり生で聴いてきました。それはCDなどで聴くより遥かに感動的で、藤田さんの大きな将来性をも強く感じさせてくれるものでした。だからこそ今回の新譜には期待もしたし、そして聴いたあとのガッカリ感も大きかったのです。
藤田さんはまだまだ素晴らしい曲を書いて歌える人だと思います。このアルバムに関しては辛口なレビューになってしまいましたが、今後も応援していますので、頑張っていただきたいです。願わくばゲームのイメージを早く払拭できますよう。
「ねらわれた学園」「彼のオートバイ彼女の島」~大林宣彦監督作品サントラコレクション
あのバカバカしくもオリジナルな世界に初々しい薬師丸ひろ子をぶち込んだ名作のサントラです。あの世界に取り憑かれた恥ずかしい時期がサントラを聞く度に蘇ります。やはり名作。