新・新本格もどき (カッパ・ノベルス)
新本格作品をネタにした連作短編集です。各編の題名は以下の通り:
「人狼病の恐怖」
「すべてがXになる」
「覆面作家は二人もいらない」
「万力密室!」
「殺人史劇の13人」
「夏と冬の迷走曲(どなた)」
「<おかずの扉>研究会」
はっきり書きます。これらの元ネタの題名と主要登場人物の名前がすらすら出てこない方には向きません。
一編一編が起承転結のある短編推理小説であると同時に、共通の登場人物が存在し全体として一つの物語を作ります。なのでパスティーシュというわけでもなく、新本格作品を「ネタにした」「もどき作品」というしかありません。ネタを知っていればにやにやし通しです。「殺人史劇…」では、可読性を捨ててまでネタ作品の構成をなぞり、「夏と冬の…」ではアレをネタにしていると思いきや同じ作家の別のアレをなぞりだし、といった恐ろしいまでの凝り方。
そんなにまでしていながら一応は破綻無くまとまっており、良く連載でこんなの書けるものよと思いますし、よくもまあこれほどマニアックなものを出版するよ流石カッパは偉いなあと思いますけど、どう見てもマニアしか喜ばないでしょうから星三つにしておきます。
四月は霧の00密室 私立霧舎学園ミステリ白書 (講談社ノベルス)
「私立霧舎学園ミステリ白書」シリーズの第一作。
袋とじで発売という懐かしい本。バリンジャーを意識しているのか?
本格ミステリとラブコメをミックスするという暴挙に出た一冊。本格ミステリ部分はまあまあ良く出来ている。子どもだましでないトリックで、著者の誠実さが感じられた。
しかし、ラブコメ部分はいまいち。なんだか、つくりものめいていて楽しめなかった。お約束を守ろうとして堅くなり過ぎているというか。
人気(?)なのか、何冊も書き継がれているシリーズだが、次作に手を出すのは躊躇する。
ラグナロク洞 《あかずの扉》研究会影郎沼へ (講談社文庫)
2000年に講談社ノベルスとして出たものの文庫化。
「<あかずの扉>研究会」シリーズの第3弾。
ミステリとしてはいまいち。トリックのわりには無駄に人が殺されすぎる。ただ、名探偵が途中でべらべらと語り出すダイイング・メッセージ講義の使い方にはびっくりさせられる。こんな馬鹿な仕掛けがあって良いのか。しかし、これもプロットのなかで上手く処理できていないような。
キャラクターに魅力がなく、造形がお粗末な点にも不満が残る。