野菊の如き君なりき [DVD]
木下恵介監督の個性が一番上手に発揮できた作品ではないでしょうか?
原作は伊藤左千夫の小説「野菊の墓」です。
老いた主人公の笠智衆が若き日の恋を回想すると、昔の写真のようにぼんやりと丸く画面が縁取られます。
それはまるで水墨画のような美しい世界。
白黒映画は世界にあまたありますが、その中でも5本の指に入るほどの美しさではないでしょうか?
若き日の恋人を演ずる田中晋二、有田紀子のカップルが初々しく、思わず知らず涙してしまいます。
水郷でのふたりの別れのシーン。
そぼ降る霧雨の中、民子のさす番傘の色さえぼんやりと霞む。
みずもに枝垂れる柳の枝。その中を正夫を乗せた小船がたゆたい、やがて画面の奥へと消えていく。
民子の祝言の場面。
正夫と無理やり分かれさせられ、意に沿わぬ相手のもとへと嫁ぐ民子。
人力車に乗った民子がふっと顔を上げます。
まるで正夫との永別の別れを告げるかのように。
そして人力車の行列は村はずれの小道を進みます。
朧月夜の中、幻のように映し出される人力車の列。車夫の掲げる提灯だけがぼんやりと灯り、まるで狐の嫁入りを見ているかのような美しさです。
そして、最後は号泣です。
切ない思いのりんどうの花があまりにも悲しいです。
野菊の墓 (集英社文庫)
アニメ版「野菊の墓」を読ませて貰ったが、今回も涙が溢れてどうしようもなく流れてしまった。各ページに大きくカラーのイラストを入れてゐるので、作品の舞台を視覚的にリアルに把握できたのはとても新鮮でした。人物の身なり表情、家のつくり、風景に、成程と暫し目が行き、作品の場面等の理解に役立ちました。
唯、表現がアレンジされてゐたり、話が端折ってゐたりしてゐるのは、ちょっと残念でした。特に、最初の回想するやうに出て来る「後の月になると思ひ出す」といふ形が、野菊の花の季節に変更されてゐる点 と 最後の所で「幽冥はるけく隔つとも」といふニュアンスが表現されてゐない点は、主人公の思ひが浅くなってはゐないか。又、野菊の墓での政夫の落胆の描写がかなり限定的であり、市川の家でのエピソードも全く省かれてゐるのは、終りを急がせ過ぎのまとめになってゐると思はれた。とは言へ、初めての人には、親しみやすく作品の中に入っては行けるかなとも感じました。
歌人の心情を詠んで偲ぶ。 覚えておきたい短歌150選
今回このCDを購入してとてもよかったと思います。昔教科書で学んだ幾つかの歌も、このCDの朗読を聴いていると新たな発見が必ずあります。
それと知らなかった歌も突然その味わいに驚くことがあります。今回当たり前かもしれませんが、いかに与謝野晶子が天才であったかを知ることが出来ました。若い皆さんにはとてもお勧めできますし、私のような中年ビジネスマンにももってこいです。毎日通勤の車の中で何度も聞いています。聞くたびに深くなる味わい・・きっとあなたにも新たな出会いがあるはず・・。もっともっと知りたくなる・・そういうきっかけを与えてくれるCDです。
野菊の墓 (新潮文庫)
昔の人の方が純粋な恋愛をしていたのかと痛感するお話。愛があっても、きっとそれを貫く力は現代のカップルや夫婦には欠如しているんでしょうか。しかし、貫き通す覚悟があっても周りがそれを許してくれないなんて可哀想な話ですよね。でも、こういう悲痛な愛はいつの時代も人々の心を掴んで離さないのでしょう。
野菊の如き君なりき [VHS]
伊藤左千夫「野菊の墓」は、何度も映画化されているが、なんと言っても一番秀逸なのは、モノクロのこの版である。
ヒロイン民子役の少女の可憐さ。
周りの人の思惑に、無残につぶされた幼い恋。
中でも泣けるのが、今は老人となった正夫が、「死ぬ前に一度」と舟で故郷におもむく、という設定である。
この人は、敗戦もくぐりぬけ、何とか今は人並み以上の暮らしをしているだろうに、そんなになっても、忘れられない、何十年も前の悲しい恋なのだ。