ありがとう、ヘンリー―自閉症の息子とともに育った犬の物語
著者は重度の自閉症児を持つ母親。デールとその家族の壮絶な闘いの記録である。
2歳になっても言葉を発しない、眠ることも食べることもしないで何時間も走り回る、かんしゃくを起こすと頭を壁や床にぶつけて自分を傷つけようとする。親とでさえコミニュケーションがとれないデールに、母であるヌアラはときに絶望し死のうとさえ思う。でも彼女は負けなかった。自閉症になんか息子を取られてたまるかという強い意志と、どんなことをしてでも学習のチャンスを与えようと決心したのだ。
犬に興味を示したデールを見て、ヌアラは犬を飼うことを思いつく。穏やかで子供にもやさしい性格を持つゴールデンレトリバーが選ばれた。デールによってヘンリーと名づけられた子犬。それまで誰ものぞくことさえできなかったデールの心のなかに、ヘンリーはそっと入り込み、人の目を見ることも会話することもできなかったデールが、ある日「愛してる」という言葉と概念を理解するくだりは涙、涙。
あたかもヘンリーが話しているように両親が工夫して始めた会話も、デールの心を開くきっかけとなった。ヘンリーを迎えたばかりのころ、デールが描いた絵と、すっかり成長し、青年となった彼が描いたヘンリーの絵を是非見比べてみて欲しい。この二枚の絵が、この青年の心の軌跡であり、努力のあかしであり、友情のしるしであることがわかる。
しかし犬がすべてを解決したわけではない。確かにヘンリーという犬はデールの最高の親友になったけれど、そこに至るまでには、両親や四人の祖父母、理解ある友人、教育関係者のたゆまぬ努力があったことを忘れてはならない。もちろんデール本人の努力も、である。
ぐいぐいと引き込まれるように読んだ。ときに涙し、ときに勇気を与えられ、たいへん読み応えのある本だった。
史上最大の作戦 [DVD]
ライアンつながりと言ってもこの作品はジャーナリストであるコーネリアス・ライアンの方です。
そのコーネリアス・ライアンが数年の月日をかけて膨大な資料と証言を集め一つの作品に収めた『The Longest Day』を原作に映像化された作品です。
なるだけ見る者に対し、政治的な偏見(米的道徳観)を持たさせずに、戦争の持つ意味合いを、各軍それぞれの立場を、自主的に判断させようとしています。(原作を知らなければ、他のAllies万歳映画と同じ印象を受け取り勝ちですが・・・)
その点、SPRと比べ映像的な迫力には劣るものの、一連のハリウッド戦争映画に嫌気がさしている人には良い作品の一つと言えるでしょう。
☆x4の理由は、原作とは異なりAllies万歳的な雰囲気を少々帯びてるから。(特に音楽)
この作品を鑑賞あるいは読んで興味を持った人には、『A Brideg Too Far』がお奨め。
功にあせったAllies首脳部(特にB・L・モンゴメリー)の無謀さを背景に、多くの犠牲者が出た作戦『マーケットガーデン』を映像化したものです。
但し、娯楽映画として見ると、かなりのヘボ映画の部類に入ります・・・。
Leg End
Henry Cowは複雑なコンポジションとインプロビゼーションを信条とする前衛的音楽集団。反体制云々ポリティカルな面が強調されるが、文句無しにかっこいいサウンドがある。第2作『Unrest』が名作と言われるが、このデビュー作『Legend』(『Leg End』)は、スピード感、荒々しさがあって、最もロック的か!?とくに1はすさまじい切れ味と展開で疾走する。Soft Machineの『4』『5』あたりが好みならお薦めです。
Art Box
Art Bearsの文字通りボックスで、オリジナルの"Hopes& Fears"、"Winter Songs"、"The World As It Is Today"野3枚に加えて2枚組で"Revisited"と"Bonus Truck"の6枚+解説冊子(英語)がついている。どれもKrause-Frith-Cutlerが中心になった独特の世界が広がる。個人的には"Hopes&Fears"が一番気に入っていて昔の仲間が加わり一番Henry Cow的だと思う。"Winter Songs"は最高傑作といわれているが、すごくくせが強く、分かれるところだろう。"The World As It Is Today"は題名からも政治的なにおいがする。前作よりくせが弱まり少し聴きやすい。"Revisited"は単体でも発売されているのが不思議だ。新曲を期待して買うとがっかりするかもしれない。Disc-1の2曲以外はいわゆるテープによるサンプラーのお遊びで、お遊びに興味がある人以外にはあまりお勧めできない(まあArt Bearsファンなら聞けるのかもしれないが)。むしろ、"Bonus Truck"は貴重なライヴで3人の他にゲストが加わり演奏に幅ができることにより聴きごたえがある。このBoxはまとめてArt Bearsが聴けるのでそれなりに価値がある。また、音質がすごくよくなっているので、以前単体を買って聴いて気に入った人はぜひとも手に入れて損はないと思う。