うつろな瞳 (Eyes Look No More) [注意:この商品はPC-AUDIO用ディスクです。通常のプレイヤーでは再生できません。] [STEREO-WAV/PC-AUDIO]
PCからデータファイルをKORG MR-2000SのHDDにコピーして再生。そのアナログ出力を自分のふだん聴いているシステムで再生した。
特筆すべきはその実在感と自然な響き。立体的な残響でリバーブなどの電気的処理のない自然な音響であることがすぐに実感できる。ほのかなチェンバロやヴァージナルはやや後ろで控えめだがとても自然。ナマを聴いたことのない人にはもの足りないと思うかも知れない。
ブロックフレーテの音も、豊かでよく通る。響きが透明なのでまといつくような共ざつ音がなくとても清らかな音がする。ブレスや気配音は、確かな実在感を感じさせるが決して目立つものではない。
MR-2000S付属ソフトで44KHz/16BitにダウンしCDRに焼いてCDPで聴いてみると、解像度が落ちるというより響きにもやっとしたかすかな付帯音がまとわりつくような感じがする。レコーダーの音色もかすかに唾がまじった感じになり、チェンバロも少しうるさくなる。ヴィオラダガンバの響きは張り出してきてきれい。こういうところがオーディオ的には面白い。
特に、ヘッドフォンなどは歴然と選ぶようになるし、WAVファイルからiPodで聴くと、かえってCDPより鮮明な音を楽しめるというところもオーディオのあだのようなもの。アンプの解像度、SN、トランジェント(「立ち上がり」より「立ち下がり」)、スピーカーの位相特性などの基本性能が厳しく問われるだろう。
選曲も演奏も素晴らしい。ふだんからは聞けるようなプログラムではないのだが、表題曲を始めいずれも名曲ぞろいで、すぐにこういう時代の音楽の虜になるだろう。
シンフォニア~C.P.E.バッハ作品集~
日本を代表するサクソフォン奏者、平野公崇氏のC.P.E.バッハの作品集である。
無伴奏フルートソナタを除いた残りの曲はチェンバロと弦楽合奏という、C.P.E.バッハの時代とほぼ同じ響きのバックが流れているが、その響きの上で、誕生して150年余りしか時を経ていないサクソフォンが、自在にC.P.E.バッハの世界を描き出している。
全曲、平野氏のソプラノサクソフォンによる演奏だが、その演奏からはサクソフォンという楽器の垣根を通り越した、音楽そのものがにじみ出ている。
古楽器の復興やらピリオド奏法などが、クラシック音楽界で常識として定着してきたが、本来、音楽というのは楽器や奏法によるものではないことも実感でき、そして、当然ながらサクソフォンの魅力も、C.P.E.バッハの魅力も堪能できる。
何度聴いても常に新しい感動を与えてくれる、素晴らしいアルバムである。