
吉原十二月
『吉原手引草』で直木賞を受賞して、その後も吉原を描いた短篇を
いくつかものにしている作者の技量が絢爛に花開き、華やかにして人間臭い
吉原の四季が美しく、浮き浮きしてきました。
読後感もよく、『漂砂のうたう』の儚げと陰鬱に比べたら天地の差。
大震災に原発事故ととかく気鬱になりがちな時こそ、
これを読んで酔いしれて、ひとときのいい気分を味わうべき。

吉原手引草 (幻冬舎文庫)
吉原一と謳われる花魁葛城が忽然と姿を消した。彼女がどんな女性でなぜ消えたのか。
ある人物が彼女の関係者から話を聞いて歩いていく。そしてその人物の正体は。
一人一人の語り口で真実が少しずつ明らかになっていく話です。
その時代の語り口調で描かれていることで、吉原という妖艶な世界観が強調されていて面白い。
そして吉原の特異な仕組みも読みながら自然と入ってくる。
しかし直木賞受賞と期待していた分、真相が明らかになった時の気抜け感はありました。