母の作法―親として、女としてのふるまい
著者の理想のお母さん像は「向田邦子の描く母」だとあとがきにあります。「おおらかで、かわいげがあって、控えめだけれど夫を叱咤し子どもを厳しくしつける強さがある。」そんな母になるための57の法則が書かれています。「大きな物音をたてない」とか「間に合わせの道具を買わない」「子どもの気持ちを代弁しない」「人をうらやましがらない」など、どれもついうっかりやってしまいがちで、なるほど〜と思うことばかりです。
私がとくにドキッとしたのは「子どもにお金の話をさせない」というくだり。さいきん経済や家計にまで興味をもつ小2の息子に何をどこまで教えるかを迷っていたのでドッキリしました。「子どものうちから株などのマネー教育をといわれるいまの日本ですが、家庭におけるこの良識は守るべき」「親に信念がないと、子どもは社会の風潮を読み取って、すぐお金の話をするものなのです」と著者。そうそう、子どもはテレビやニュースに敏感ですからね…。要は世相や流行がどうあろうと、ながされず、親が自分の中に軸をしっかり持とう!ということ。全部を実行するのは難しいかもしれないけれど、せめて理想は高くありたいなと、背筋がぴっと伸びるような本です。
渚にて【新版】 人類最後の日 (創元SF文庫)
小説の大半を通してドラマティックなことは何も起こらず、ただ淡々と日常が描かれている様は、正直結構退屈でした。
でも、その前中半があったからこそ、後半に描かれる愛する人との絆がよりリアルに感じられます。
自分の愛する人々のことを思い、思わず泣いてしまいました。
よく「終末世界ものの傑作」として、キングの「スタンド」や漫画の「ドラゴンヘッド」と比較する文章をみかけるのですが、全くジャンルが違います。
はっきり言って、これは素晴らしいラブストーリーだと思います。
ビタミンF (新潮文庫)
30代後半から40歳という、中年に差し掛かった男性の視点で描かれた家族像、7編。
父親として・・・中学生の娘が不純異性交遊していたら、学校でいじめられていることが分かったら、思春期の子ども達とどう関わりあっていけばいいのか。
夫として・・・長年暮らせば暮らすほど、妻のことがわからなくなっていく、夫婦間のずれの発生。自分にはもっと違う人生があったのではないかと、昔の女性に思いを馳せることも・・・。
息子として・・・自分が親の立場になってはじめて、自分と同世代だった頃、親はどんな気持ちでいたのかを理解する。
どこにでもありそうな等身大の家族の日常が描かれていて共感しやすく、女性の私としては、男性の気持ちを覗き見ることができて新鮮でもあった。読後はじんわりと暖かい気持ちになる、直木賞受賞作だけあって、どれを取っても秀逸の短編集
渚にて
スヌーザーの【The Essential Disc Guide 2004 あなたのライフを変えるかもしれない300枚のレコード】で紹介されている作品(ディスクNo.145)。
絶望的で暗いとの評価が目立つアルバムだが、個人的にはあまりそう感じない。
確かに、核戦争で人類が滅んだあとに一人取り残されたような歌声ですが、
大いなる虚無をのみこんでしまうな力強さを感じます。
(実際に、ヤング自身が身近な人の死を乗り越えなければならなかった背景がある。)
まるで、人々が滅ぶことを認識しながらも生きていく『風の谷のナウシカ』や
絶対に負けてしまう戦いにそれでも赴く『鉄腕アトム(アトムの最後)』のようでもあります。
『マルドゥック・ヴェロシティ』のボイルドも、ヤングのこの[強い弱さ]とでもいうべきものがあれば、
虚無に落ちることはなかったかもしれません。
もし、アナタが今現在、虚無にとらわれているとしたら、
このディスクに手を伸ばしてはいかがでしょうか。
「Walk On」