キス・ミー・ケイト 特別版 [DVD]
シェイクスピアの「じゃじゃ馬ならし」をミュージカル化した舞台と主役二人(ハワード・キール、キャサリン・グレイソン)の恋の鞘当てが同時進行で描かれる趣向が楽しい。DVDのジャケットからも伺えるカラフルな色使いの衣装や舞台装置が素晴らしく、舞台背景の画などシンプルではあるが、何か芸術作品を思わせる。ダンスシーンとしては、アン・ミラーが真っ赤な衣装でタップを披露するTOO DARN HOTがまず強烈!!(凄いタップにあの脚線美!)ハイライトは、映画の本筋からは外れるが劇中、三人の求婚者に扮した若手ダンサー(トミー・ロール、ボビー・バン、ボブ・フォッシー)によるダンスシーン!!メイキングによると、振り付けのハーミーズ・パンから自由に踊っていいと言われた三人が三者三様の踊りを見せたものをそのまま採用しているとのこと。三人とも踊りのキレがいいことと言ったら!!ホント、目が離せなくなる!!フォッシーのダンスはひと目で彼とわかるもので興味深い。トミー・ロールは、アン・ミラーの相手役としても凄いダンスを見せてくれる。あと全編に流れるコール・ポーターの音楽がこの映画の魅力です。名曲SO IN LOVE(淀川さんの「日曜洋画劇場」のエンディングテーマです!)は、キールとグレイソンのデュエットで聴けます。ミュージカル映画として楽しく、ダンスシーン、音楽とどこをとってもお勧めです。アン・ミラーら出演者が当時を振り返る10分程度のメイキング、映画とは直接関係ないですが当時のマンハッタンを紹介した短編映画(ナレーションはクラーク・ゲイブル)、予告編が付いています。
プレイズ,ニーノ・ロータ
このCDは、イタリアのCAMから発表された"Rota Tutti Filmidi Fellini”と”Nino Rota Musiche da Film"からニーノ・ロータの自作選集として日本で編集されたもの。演奏は、ニーノ・ロータとフェリーニが監修し、カルロ・サヴァーナがオーケストラの指揮を執っている。
ニーノ・ロータこそ、巨匠の名に相応しい。ニーノ・ロータが作曲したとりわけ有名な17曲が納められていて、まず馴染みのある曲ばかりだろう。
「ゴッドファーザー」「ロミオとジュリエット」「太陽がいっぱい」「道」「ゴッドファーザーPARTII」など、曲だけ聞いていても胸に染み入るものばかり。
素晴らしい永遠の旋律がズラリと並んだ画期的アルバム。
映画ファンばかりでなく、音楽ファンを唸らせると思う。
じゃじゃ馬ならし・空騒ぎ (新潮文庫)
「じゃじゃ馬ならし」は、「じゃじゃ馬」だと思われていたケイトが、一人のタフ・ガイと出会って魅力的な女性に変身する話。一方の「空騒ぎ」は、男嫌い、女嫌いのベネディックとベアトリスが、友人たちの好意ある罠にはめられ、それぞれ優しい女性、頼もしい男性であることに気づき結婚に至る、という喜劇。共に「思い込み」がテーマになっている。
でも、「思い込み」とはなんだろう? ケイトはみんなに「じゃじゃ馬」だと思われていた。自分でもそう思っていたに違いない。だが本当は、ほかの誰よりも女らしい女性だった。--本当だろうか? 劇の冒頭、私たちは彼女を「じゃじゃ馬」だと思い込んでいた訳だが、それなら終幕の理想的な女性となった彼女にだって、そう思い込んでいるだけかもしれない、と疑うことも許されるのではないか? この二つの喜劇に共通している本当のテーマ、それは「私とは誰か」という、もっと根源的な問いかけかもしれない。
私は私だと思っている。私はこれが本当の自分だと思い込んでいる。でも実際の私はぜんぜん別な人間かもしれないし、ただ自分でそう思い込んでいるだけなのかもしれない。私は「じゃじゃ馬」かもしれないし、そうでないかもしれないし、あるいはその両者であるかもしれないし、両者とはまったく無関係かもしれない。ーーひとつだけ明らかなのは、人間は変わる、変わり得る、ということだろう。
アナタハ、本当ニ、アナタデスカ?