世界の中心で、愛をさけぶ <完全版> DVD-BOX
旧DVD-BOX再販にあたり少し書いてみたい。“初恋の相手が急性白血病になり死ぬドラマ”――聞けば非常に陳腐である。ベタ過ぎである。私も「どうせ見れば泣けるだろうけど、今更そんなものを見ても……」と思って長年このドラマを無視していた。教訓めいた話やセリフも予想され、臭いんだろうなぁ、と思っていたのだ。しかし、第一話からそうした偏見は突き崩され始める。脚本や演出が天才的にうまいのだ。これだけ陳腐になりがちなテーマで、よくぞここまでのリアリティと説得力、胸にぐっとくるセリフ回しや絵を作れるものだ、という感心と感動は、物語の回を追うごとに、強まっていく(制作期間は短く、進行は過酷だったそうだが、おそらく、小説や映画を超えたいというスタッフの意識が、非常に高いレベルで作品に結晶しているのだ)。非常に緊密で繊細なシナリオだ。恋の悩みや失恋の悩みは、他人の話としては非常にありふれていて、どれも陳腐ですらある。そう、それが他人の話であるなら――しかし、それが自分の話となると様相は異なってくる。恋の悩みや失恋の苦しみは、いくら知識で教わって知ったかぶりをしていても乗り越えられないのであって、自分の体験として誰もが苦しみ、自力で乗り越えねばならない類の人生の普遍的課題である。このドラマは、確かに、恋をし、その恋人を失う痛みを、我がことのように切実に感じせるのに成功した希有なドラマだと思う。最後まで隙も無駄もない脚本、演出、美しい映像、そして演技に、拍手を送りたい。生涯見た中で5指に入る映像作品はこれだと断言できる傑作。そして勿論、この作品を傑作たらしめたのは俳優陣の演技の説得力に負うところも大である(個人的には二人のサク君がやや微妙だが)。特に男性は、無条件に愛してくれる、初々しくも美しい綾瀬はるかさんに、青春時代――まだ女性に強い憧れを抱いていた頃の気持ちを呼び覚まされるだろう。723名が参加したヒロインオーディションではがくがく震えていて、声も出ず、採点的には最低だったという綾瀬さんを、それでも起用したプロデューサの慧眼には恐れ入るばかりだ。透明感のある彼女の演技と笑顔なしに、この作品は成立しえなかっただろうから……サクが17年間見続けたであろう夢の中を描いたラストシーンは、視聴者にとっても、自らの切実な喪失感として、長く記憶に焼き付くはずだ。
北の国から 89 帰郷 [DVD]
未見のユーザーの方のために、細かい内容について書くことは致しません。
ただ、非常に質の高いドラマである、ということだけは確かです。
甘やかすばかりではなく、突き放すかたちの愛情、無償の愛情が、やさしく、丁寧に、濃密に
描かれています。
暗い、つらい、といったレビューが見られますが、シリーズ全体の主人公である黒板家の3人が、
どういう軌跡を辿ってきて、どういう絆で結ばれてきたのかを理解していれば、あまりそういった
見方にはならないでしょう。
ぜひ、最初に放映されたドラマシリーズ全24話、'83 冬、'84 夏、'87 初恋、と通して見たうえで
この作品を鑑賞してみてください。
なお、蛇足ではありますが、個人的には前作 '87 初恋 から、この '89 帰郷 にかけてまでが
シリーズのピークだったと思っています。
'92 巣立ち 以降は登場人物の増加やストーリィの冗漫さが目に付いてしまい、残念ながらそれ
までの質の高さは感じられませんでした。
もちろん、可能な限り丁寧に造られているのは確かです。
しかし内容そのものは『北の国から』以外のフォーマットでも充分に造れるものだったと思える
のです。
そういう意味で、この『帰郷』はシリーズ中、最重要作であったのではないでしょうか。
天国で君に逢えたら [DVD]
以前TVでやっていたのを拝見し購入しました。
これは良作です。
主演の精神科医、野々上先生の元へと足を運ぶ患者のみなさんがとてもキュートで人間味溢れていること。
カウンセリングルームに漂う暖かい空気感。
そのすべてが優しい。
この手のお涙頂戴のドラマはたくさんあるが、これだけは違う。
自然と涙している自分に気付ついた。
死という重いテーマにもかかわらず、見終わったあとの爽快感はなんだろう。
ドラマとしての抑揚こそないが、本当に優しくなれるドラマ。