変革は、弱いところ、小さいところ、遠いところから
今、まさに日本の社会・経済が、量の経済から質の経済に入り始めている事を、次々と実例を並べ、紹介されています。バラバラな成功事例を単に継ぎはぎしたものではありません。新たな資本主義の段階を予感させるものです。
時代が大きく変わろうとしている事の必要性、必然性、そして、その先にある本当に人間らしい暮らし方、働き方、学び方を私達に示唆して下さっています。豊かさとは何か?豊かさを産み出す付加価値について、今までの基準が通用しなくなってきている現状を7年前に見通していらっしゃったのは驚きです。
このような変革の芽は、目まぐるしく競争が繰り広げられている大都会では伸びにくく、むしろ辺境の地、ゆったりした心根の地で、根を張り芽吹いてきていることを教えて下さっています。一人一人が自分の価値観、独創的でありながら共感を呼ぶ価値観に基づき、暮らし、働き、学ぶことのできる新しい芽生えです。
この芽を伸ばしていくには、組織のあり方も変わる必要があり、頂点が一つだけのピラミッド組織ではなく、ゆるやかな組織、多面体の球のような組織、多面体に沢山の頂点があるように、全員がリーダーの組織が適しています。力強い独創力を育んでくれる事を、実例をもって紹介して下さっています。
それぞれの独創性を活かしていくには、様々な価値観のぶつかり合いをコーディネイトする能力が求められます。それには、過剰になりがちな自己愛やプライドを自己制御していく事が必要です。上下意識で人と接する事を止め、自分の方からどこまで降りて行けるか、それによって、人と人とが、心と心で繋がってゆけるのだと教えて下さっています。
映画「降りてゆく生き方」も、この本や著者から多大な影響を受けているそうです。また、この本では紹介されていませんが、長野県の小布施の町づくりは、著者の論理と一致している好例だと思います。「セーラが町にやってきた」も合わせて読まれることをお勧めします。