横濱ウィンナー [DVD]
くるりがこの10年の歩みの中でアルバムごとにスタイルを変えてきたことは、ファンなら誰もが知るところだ。
かくいう私も「東京」を好きになってから10年間、その変化のおり、時に感動し共感し賛辞をおくってきた。だが、ここ最近のくるりには落胆していた。簡単に言えばその楽曲に。
だがこの「横濱ウィンナー」を見て落胆は一度に希望へと変わった。またくるりが好きになった。
理由はくるりがくるりらしい、からだ。オーケストラとの融合が素晴らしく、それはよりくるりの楽曲のよさを際立たせている。
くるりを初めて聴いた時の若さが感じられたのは、オーケストラがよりくるりの楽曲がもつ彼ららしさを醸し出したからかもしれない。
過去の楽曲の焼き直し的曲ではなく。
彼らはだいたいの部分で変わったし進化したのだろうが、音楽に向き合う眼差しは変化せずにまっすぐなままだと感じた。
それがこの「横濱ウィンナー」のライブに出ている。
高杉さん家のおべんとう 1
年の離れた親戚同士の青年と女子中学生のある日突然始まる同居物語、でも互いに訳あり苦労あり相手に対する戸惑いあり−−そんな話です。親の不在が主軸としてまずメインの二人の中にトラウマ級に厳然としてあり、そこからそんな二人がどう関係を築いていくかというのを見ていく物語なのかなと読んでいて思いました。
お弁当、潤滑剤として相手を理解していくものとして"それ"がそこで登場し、そのお弁当を通して相手を理解し信頼を、あるいは愛を深めていく物語は読んでいて口元を自然緩ませること確実かと。近年の風潮をもろに反映し、二人に関しすぐに「男女のコト」を周りが勘繰る流れはしょうがないというかうざいというか、でも「そうなる」のが一番いい展開だろうにというのが男性側としてのこれは一意見。こういう関係、羨ましいです最高です!
ヒロインの久留里が倹約家でそれが趣味の域に達していたり、主人公の温巳が有能なダメ人間なのが読んでいて身近に感じられてよかったです。久留里の実の父親のこと、久留里の、職場の同僚の温巳への仄かな恋の予感、将来に対するトラブルの、幸せの萌芽が感じられての一巻、とても面白く読めました。二巻も大いに期待です。
まほろ駅前多田便利軒オリジナルサウンドトラック
映画『まほろ駅前多田便利軒』のサウンドトラック。
全曲をくるりの岸田さんが手がけています。
様々な場面に合わせた、様々な曲が揃っており、
アコギのみのシンプルな曲、管楽器を多めに取り入れたゆったりとした曲、
はたまた、バンドサウンドが響く曲もあれば、電子音が唸る特殊なのもありと、
全体的に岸田さんの音楽センスの広さが光る、聴くだけでも楽しい一枚です。
そして主題歌である「キャメル」と「まほろ駅前多田便利軒」。
どちらもゆったりとしつつも骨太ロックサウンドが響きわたる、
片方明るく、片方ダウナーなロックチューン。
個人的には「キャメル」のアウトロが良かったです。カッコよい!
全体を通して、良質なサントラだと思います。
映画を観た人も、くるりが好きな人にも、双方お勧めです。
シンシロ(通常盤)
不思議なサウンドです。ジャンルでいえばロックなんですが、それに絡むキーボードの音?やらがオシャレで独特の切なさを漂わせています。(音楽に詳しくないのでどういう方法を使っているのかは分かりません)とにかく音作りに凝ってる印象です。どれから切っても「サカナクション」だな、と思わせます。ボーカルの声質や謎のフレーズの繰り返しはフジファブリックにも共通しているかも。曲調が突然変わるのも面白いです。
そして歌詞の魅力。m-8で「庭で死んでいた蝉をみて 自分もいつか一人になると知った」「何度でも何度でも嘘つくよ 人らしく 疲れても それしかもうないんだ」を聴いて泣きたくなりました。この曲の「enough」というタイトル、歌詞と一緒にじっくり味わってみるととても深いです。山口さんの葛藤を感じます。他の方のレビューにもありますが、言葉の選び方がどれもいいです。どうやらサカナクションの曲の中では異色的存在らしいm-6〜8が超絶に好きです。この3曲がなければファンにはならなかったかもしれません。もしかすると、「演奏の現代っぽさ(斬新さ)」と「歌詞の独特さ(素朴さ)」がこの不思議な感覚を生み出しているのかもしれません。m-1、Ame(B)にちなんで、しとしと降る雨の夜や、リラックスしたい休日の午後に似合う一枚。m-11は、アルバムの締めとしてふさわしい壮大なイメージです。イントロが中華を思わせました。