デンデラ
70歳を過ぎると村から捨てられる『楢山節考 (新潮文庫)』を連想する姥捨て山で、白装束に身を包み極楽浄土を信じて疑わない斎藤カユの意識が朦朧としてきた時、聞こえてはないらない老婆の声が聞こえてきて・・・
暴力で動いていた村から捨てられた老婆たちが女だけの共同体デンデラを形成していて、斎藤カユは望みもしないのに救出されその共同体デンデラの一員にされてしまう。しかしそこは70歳から100歳の百練千磨の老婆が人を騙して動く村で、主人公斎藤カユはこれまでの人生とは違う「生きる」意味を考えることになる。
生きていたくない筈なのに生きようとする行動に繋がる過酷なデンデラでの日々、貧しさが村を狂わせるが死にたいと願う老人が死を恐れていないわけではない。
斎藤カユを始め登場する老婆の息が聞こえてきそうなくらい描き方が丁寧なのに、生々しいわけでもない。体力も弱々しい老婆たちなのに、闘志が作品に漲り気迫が途切れることがない。
挿入される熊の襲来も、相乗効果となり、作品のスケールを大きくしている。
作品の満足度も高いだけでなく、佐藤友哉の成長からくる充実感で満たされた。
佐藤友哉は、『クリスマス・テロル―invisible×inventor (講談社ノベルス)』幕引きから3年ぶりに刊行された『鏡姉妹の飛ぶ教室 (講談社ノベルス)』が戯言から成長を感じない作品で化けてもいなかった。でも、『子供たち怒る怒る怒る』で底力を感じさせた後この『デンデラ』だっただけに読者としての充実感は非常に大きかった。
四季・知床半島 ~ヒグマ親子の物語~ [DVD]
“カムイ”と名付けたヒグマの子どもとその母熊を、長期間に渡って追いつづけたドキュメンタリー。ヒグマの子どもは、二匹に一匹の割合で死んでしまう。子グマがいずれ独り立ちできるように、生きる知恵を身をもって教える母熊。しかしある時は厳しく突き放し、数週間も置き去りにしたりする。そんな中でカムイは、自分で獲物を獲ることを覚え、たくましく成長していく。
知床の冬は厳しく、一年の半分を占める。その中で、他の動物たちも懸命な営みを続けている。川で産卵した直後、力尽きてそのまま死んでいく鮭の群れ。それがそのまま、熊たちの貴重な栄養源となる。また、海底で卵を数ヶ月抱きつづけ、孵化していく稚魚たちの姿を見届けて、力尽きてひっそりと死んでいく雄の深海魚。
どの動物もいとしく、感動的でさえある物語を、淡々と語り継いでいる。その押しつけがましくない語り口に好感が持てる。日本にもまだ残されている手つかずの大自然と、その中で生きる動物たちに、畏敬の念を覚える。
羆撃ち
表紙を見てもわかるように、主人公はあくまでもフチなのだ。
著者はフチとともにハンターとしての道を歩んでいったのであり、フチがいたから狩猟で生きていけたのだと思う。
自然の過酷さと美しさを詳細に書き表し、そしてフチへの厳しさと愛情。
最近読んだ本では一番感動した。
ワイルドボーイズ 1stシーズン [DVD]
マネをしようと思うとまずアフリカに行かなくちゃなんないしね。
ということで、もとJACKASS組の最強の2人がアフリカに行って
動物ネタにチャレンジしているのが、このシリーズ。やりすぎ。
というか、相手をどんなに怒らせてもそれが人間であれば、交渉の
余地というものがあるが、野生動物を相手にバカをやるのは
本当にバカだと思う。とりあえずシマウマの着ぐるみを着て
ライオンやチーターに近づくと危ない、ということがよくわかる。
・・・・コレを「マネすんな!」っていわれてもなあ 。
羆嵐 (新潮文庫)
熊が可愛いと言う方は、これを読むと考え方が180度引っ繰り返ります。
大正時代に北海道開拓地に現れた巨大な羆(ひぐま)が巻き起こした
実在の獣害事件の顛末をドキュメンタリー形式で綴った一冊。
自然の前でいかに人間が無力な存在かを思い知らされ、
彼の地を切り開いた先人たちの苦労を偲ばずにはいられません。
またマタギとして最高の腕を持つ、猟師銀四郎の、生と死の境目を踏破せんとする破天荒な立ち居振る舞いと言動は、なるほどなと納得させられました。
猛獣を前にただただ哀しいほどに人間臭く怯え、
恐怖する人々を浮き彫りにした描写も実に面白く、読み応えも抜群です。
この作品で著者を知っただけに思い入れも一入です。