新版 クラシックCD 演奏家篇 (文春新書)
クラシック音楽の批評というと、日本では月刊「レコード芸術」という雑誌が権威的な存在として知られている。
そこには、「先生」と呼ばれる執筆者たちによる、「批評」という衣装を着せられた商品の宣伝文が掲載されている。
そうした文章は、掲載広告に依存して辛うじて成立している雑誌において許容される表現がどのようなものであるかを端的に示しており、そうした事情に留意して読むことができるのであれば、それはそれでいいのかもしれない。
しかし、問題は、そうした執筆者の文章が事実上ひとつの規範として成立してしまっていることである。
そのために、これからクラシック音楽を聴こうとするひとが、そうした筆致で執筆された書籍を手にとると、クラシック音楽というものが非常につまらないものであるかのような印象をあたえられてしまうことになるのである。
業界の利害関係者の心情を慮る巧みなバランス感覚にもとづいて執筆された文章は、結局のところ、ひどく退屈なものである。
普通の感性をそなえたひとであれば、そうした言語空間で消費されている芸術など所詮面白いはずはないと思うことだろう。
そうしたなかで、異色の存在として長年にわたり活躍してきたのが、宇野 功芳氏である。
批評対象に対する自らのスタンスを明確に表明して、そのうえで、意見を述べるというその姿勢は――実はそれは常識的な条件であるはずなのだが……――宇野氏の文章を貴重なものとしてきた。
その宇野氏を中心とする3人の執筆者によるこの著書は、その意味では、単なる宣伝文の羅列する人畜無害の入門書とは異なる、真の意味で読者に親切な作品であるということができると思う。
また、今回の増補版の作成にあたり、最近の動向を考慮して、それなりの頁数が付けくわえられているので、これからクラシック音楽を聴きはじめようとするひとにも有用なものだと思う。
もちろん、あくまでも、入門書の域を出るものではないので、長年にわたり音楽を鑑賞して、自らの感性を鍛練してきたひとには、全くものたりないものであることは事実であるが……。
今回、この増補版を一読して、3人の執筆者の文章に対していだいた感想を簡単に書きとめておきたい。
宇野 功芳氏:批評家として、すでに完成しているためであろうか、基本的には、この著書には、全くあたらしい洞察や情報は掲載されていない。宇野氏の文章は、自らの感性に対する絶対的な自信にもとづくものであるが、しかし、個人的には、そこに全く揺らぎのないことに漠然とした違和感と退屈感をいだいてしまう。結局のところ、「周囲の人間が何を述べようと自分の意見は変わらない」という強固な姿勢があるとき、そこには、対話の可能性が生まれようがないからである。その意味では、宇野氏の文章は「完成」したひとの退屈さを漂わせる文章ということができるだろう。
中野 雄氏:長年にわたる著名音楽家との豊富な交流をとおして見聞した発言をひんぱんに引用しながら、精緻な文章を執筆している。ただ、そうして引用される発言が悉くありきたりの発言なので、正直なところ、鼻じろんでしまう。それらの引用は、そのあたりに陳列されている雑誌をめくれば、どこにでも書いてあるようなことばかりなので、それを深淵な叡智と洞察に溢れたありがたいことばとしてあらためて呈示されても、読者としては、しらけるだけなのである。音楽家として優れているということが、必ずしも、その発言を洞察に溢れたものとすることはないということをわれわれは既に知悉しているのであり、音楽家を聖人に祭り上げる昔ながらの構図にもとづいて文章を執筆する中野氏の感性を正直なところ疑ってしまう。
福島 章恭氏:僕は頑張って精進しています!! という、まるで思春期の青年のような純粋な熱意に溢れた文章。本の執筆をするのは、もう少し時間が経過して、そうした力みがとれてからでもいいのではないかと思うのですが……。
行正り香監修 バッハ for DINNER&DRINK~静かで心穏やかなディナーとお酒に
なじみのある良い曲が、一流の演奏者が奏でているのでお得な一枚。夜のくつろぎタイムや、食事中に聞いています。バッハの曲はシリーズで買うと長いのですが、これはバラエティーに富んでいるので飽きさせません。でも全体として選曲に統一感があるので聞いてて心地よいのがいいです。これを聞いてから、結局グールドの他のバッハや、吉野直子さんのハープを買いました。バッハが大好きな人も、初心者にもオススメです。
エヴリディ・バッハ~究極のバッハ・ベスト
バッハなら何でも聞いていたい、という私には嬉しい企画のセットです。バッハ作品のCDはたいてい持っていますが、ショップで見て思わず買ってしまいました。仕事をしながら、BGMのようにバッハをかけたりしますが、無伴奏にしようか、それともきょうは合唱曲の気分かと、迷ったり、あるいは聞いていてCDを替えたりする、そんな手間も気遣いも要りません。お任せで、いろいろ聞けて、しかも全部バッハです。なんとぜいたくなこと。
7枚のCDはSUNDAY「新しい1週間に向けて」からSATURDAY「心豊かな週末」までの1週間という趣向で、バッハ作品がジャンルを超えて組み合わせられ、1枚が70分前後です。無伴奏ヴァイオリンの「シャコンヌ」などは水曜日にはピアノで、土曜日にはシェリングのヴァイオリンで聞けます。もちろん15分ほどの演奏フルで入ってます。よくある寄せ集め名曲集のようにサワリだけなんてことはありません。逆に、平均率クラヴィーアを1時間も2時間も聞き続けたいわけではなく、20分も聞いたら、チェロが聞きたい、コラールが聴きたい、というわがままな聴き方が出来ます。(きっと本格的なバッハファンは邪道とおっしゃるでしょうが、大きなお世話です。)
今、フライシャーでピアノ版「シャコンヌ」が終わったら、グールドの「ゴールドベルク変奏曲」のアリアが聞こえてきました。これで水曜日はおしまいです。いいですねえ。心豊かな気持になります。
のだめカンタービレ ベスト100 (通常盤)
購入したいけどちょっと高いなあ・・・と思っていたが,CD屋で実物を見たら思わず衝動買いしてしまった!
しかし,これはいい。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「悲愴」はじめ全曲聴きたかった「のだめ」登場作品がずらりと揃っており,聴きごたえがある。
解説書もていねいで分かりやすく,クラシックのCDあれこれ単品で買い続けるよりも結果的には安上がりとも言える。
私のように「のだめ」をきっかけにしてクラシックにのめり込んだ人にはこたえられないCDボックスである。
斎藤秀雄 講義録
サイトウキネンは知っているけれど、小澤征爾さんも知っているけれど、
いったい齋藤秀雄先生ってどんな教えをされていた方なんだろう・・と
ずーっと長年知りたくてたまりませんでした。
そんな人には、ほんとに目から鱗の本です。
バッハの解釈も、モーツァルトやベートーヴェンの解釈も、その時代にはこんな流れもあったから、ベートーヴェンはこうしたんだよ。モーツァルトは「洒落」
ロマン派を経験して今がある・・だから現代の解釈というものは、このような解釈であって良いのだということが、
大きな裏づけと共にいっぱい書いてあります。
クレッシェンドだけでも、このような種類があり、そのようなことを箱根の山にたとえていらっしゃる。
曲の展開の仕方、メロディのフレーズの考え方も、非常にわかりやすい例えが書いてあって、これがヒントだよ。あとは自分でやってごらん!とやさしく言われているように感じます。
この本は、とてもわかりやすく、編集に関わったメンバーをご覧になればわかる通り、先生の言葉に忠実にやさしく書かれてあります。
この本を読めば、音楽理論の大学の授業は要らない・・
こんなに楽しい授業を受けてみたい!自分自身も齋藤先生の講義を受けている気持ちになってしまうほど、虜になりますよ!