無私と我欲のはざまで―浮世を生き抜く
中には、昭和最晩年に書かれたものもあるが、概ね、平成年代に入ってから書かれた、あるいは講演されたもののうち、内容が特に充実したものを集めている。「関西大学を早期退職する経緯」、「大阪人気質」、「補佐役としての生き方」、「三国志」等今回も谷沢さんならではの、自分が気づきもしなかった視点からの論評にぐいぐい吸い込まれた。中でも、うなったのは「山本周五郎の樅ノ木は残ったを語る」部分。なぜ、この作品が日本近代文学史上で他に例を見ない特徴をたたえているのかこれでもかこれでもかと詳細に説明されています。(ここは読んでのお楽しみ)
でも、この人、自分で自分を「極度に疲れやすい体質」と書いているが、一体そんな人間が、こんなに本を読み、本を書けるのだろうか。この人の疲れやすさの基準は誰との比較なのだろう。