ULTIMATE CRASH ’02 LIVE AT BUDOKAN [DVD]
2007年5月、2年7ヶ月ぶりに復帰を果たした鬼束ちひろ。
彼女の魅力を存分に伝えるライブ盤が、この「ULTIMATE CRASH ’02」である。
まず、音質が良い。クリアだし、臨場感もうまく伝わるバランスになっている。
映像にもセンスを感じる。アングルの組み合わせなどが絶妙なのである。
しかし何より、それぞれの楽曲と彼女の歌声のすばらしさだ。
声は後半になるにつれて伸びやかさを増し、表情もやわらかになってゆく。
曲のメッセージもこちらに響いてくる。
前半の「infection」、中盤の「Tiger in my Love」、アンコールの「月光」は、特に見所だ。
ファンはもちろん、彼女に少しでも興味を持った人ならば、買う価値は十二分にある。
曲の幅が広いぶん、「CRADLE ON MY NOISE」よりもちょっとだけおすすめ。
月恋歌「劇場版TRICK霊能力者バトルロイヤル」主題歌
宮城県出身のシンガーソングライター、熊谷育美さんが歌う、
映画「劇場版TRICK 霊能力者バトルロイヤル」の主題歌である今作。
ピアノ弾き語り曲でありながら、その芯のあるボーカルゆえ、
繊細でいて力強く、どこか懐かしさをも感じられる良曲だと思います。
個人的にも、月にお祈り〜、系の曲は大好き。
c/w曲「ひとり」も、出だしのピアノがとても綺麗で印象的です。
彼女、とっても良い歌手だと思うのですが、惜しむらくは、
とにかく背景に「鬼束ちひろ」の存在が見え隠れすること。
もはや最初からハンディを負っているとも言えるのかもしれません。
ただ、確かに声は鬼束ちひろ似ですが、曲内容は柴田淳よりかなあ、なんて。
歌手としての方向性としても、ロッキンで退廃的な鬼束節でなく、
ピアノバラード色で逆境の中に幸せを探す柴田淳節であるほうが、
まだ聴いていて救われるし、きっと長続きするんじゃないでしょうか。
ということでこれからに期待を込め、星5つ!
月の破片
最近のド派手なファッションや、左腕のタトゥー、ため口ばかり
注目されますが、『月光』のころから変わらない彼女の内面が
手にとるように読みとれるエッセーです。
父親、母親、弟、妹への愛が、行間からあふれ出しそうな、
「家族思いの暴れん坊長女」。長女なのにわがままな末っ子みたい。
自分の音楽の才能には絶対的な自信をもっているのに、
逆に、性格的にはダメ人間な自分に自信がもてず、
人前では過緊張、人間嫌いだけど寂しがり屋。
ヘンなクスリやってるのでは?という誤解もあるけど、
お酒もタバコもダメで、あまりに体力があり過ぎるので、
逆にムリをしてしまう。
最近の攻撃的な外見とはウラハラな、ファンキーでキュートな内面に、
ますます魅力を感じました。
もちろん、暴力事件、自殺未遂、デビュー当時についても、
きっちり語られています。
鬼束ちひろファンならずとも、意外にも、心温まる読後感を残すエッセーです。
papyrus (パピルス) 2011年 04月号 [雑誌]
ゆずの特集を目当てに購入。880円でカラー写真6枚にインタビュー記事8ページ。写真がよかった、テキストもよかったという話を聞いて本屋でチェックしてみたら、思わず買ってしまっていた。
写真はやわらかな色合いで確かにかわいい。2人が一緒に映りこんでいるショットは3枚だけだが、裏表紙に使われたもう1ショットを含めて、ちょっと連れ出してはい撮りますよーといったような自然体な雰囲気が素敵。34歳が2人して、夕日にまぶしそうに眼を細めてのピースショットはなんだか和む。
インタビューは2人でではなく、個別にそれぞれ4ページずつ。アルバム製作前後の心情やどういった流れを経てのアルバム製作だったのか、2というタイトルをつけた事に対しての思いや、その作業中の流れなど。他雑誌でのアルバムプロモーションインタビューで見た内容は確かに多いけれど、その中で興味深く思ったのは、それぞれが語る「その時の相手へのアプローチ」や「その時の相手を見てどう思ったか」といった部分。それが大半を占めているわけではないし、すでにどこかで聞いたことがあるような言葉だったりもするけれど、それぞれが作詞作曲を手がける「ゆず」の北川悠仁と岩沢厚治の、「今の距離感」や「今の信頼の種類」というものがにじみ出ているように思う。言葉で確認したわけではないけれど、「(自分はこたえていたし、)岩沢もこたえていたと思う」と話す北川悠仁や、特に岩沢厚治の語る「(北川のことを)理解はしていないです。」というくだりは、ぜひその文章すべてを読んでもらいたいなぁと思う。
個人的な意見なんだけれど、「ゆず」というこの2人のことを表現するとき、「奇跡」という言葉より「偶然」のほうがしっくりする気がするし、「唯一無二」よりも「絶妙なバランス」のほうがある意味適切なように思う。「偶然」なはじまりを終らせない為には努力が必要で、「絶妙なバランス」というのは「取っていくこと」が必須条件だと思うから。音楽を仕事とし、続けることだけでも時間や労力や心労が伴うそれを、何よりも「2人ともがボーカルであり、2人ともがソングライターである組み合わせ」で「ずっと続けてきた」ゆず。今もなお日本の音楽シーンに「ゆず」が存在しているという、その長い時間経過だけでも生まれるのであろう信頼というのは、もはや2人の中では「揺ぎ無いもの」というよりむしろ「あって当然なのでは?」と言ってしまえるものなのかもしれない。
「だけど ずっと 君といるんだよ」というフレーズをふと思いだす記事だった。
"ONE OF PILLARS" ~BEST OF CHIHIRO ONITSUKA 2000-2010~
発売されているのを知らず、あわててCDショップを周り、ゲットしました。
全体としては今まで聞いたことのある曲ばかりですが、一曲のみ惑星の森という新作が入っています。
バラード調で従来の鬼束イメージ通りの出来で非常に満足です。
しかしこうして10年の軌跡を通して聞くと、改めて彼女の才能に驚愕せざるをえません。
実に素晴らしい楽曲ばかり、歌詞カードを眺めながら至高のひと時を味あわせていただきました。
まさに鬼束ちひろの代表的アルバムと言っては良いのではないでしょうか?