がんを狙い撃つ「樹状細胞療法」 (講談社プラスアルファ新書)
標準治療に用いてすら国際的な臨床試験では効果が怪しいとされてきたフルツロンやイリノテカンを、「薄めて」使えばガンと共存できるとしてきた、「薄められた細胞毒」を用いたダラダラ投与による治療法が、どの程度奏効したのか、エンドポイントである生存率と患者のQOLを本当に上げてきたか否かという、前二著以降に判明したであろう子細な検証を一般に対して提示する前に、別の療法に飛び移るというのは、どういうことか。
免疫学的機序からすれば、弱いとはいえ、細胞毒をガン細胞と宿主の双方を殺さない程度に薄めて投与するというのは、姑息な対症療法に過ぎず、必ず免疫力を衰えさせるわけで、ガン細胞を殺すのが最終的には抗癌剤ではなく、宿主の免疫細胞である以上は、いわば、原理的には、以前の自らの仕事とは正反対の療法の紹介書を平気な顔で書いているわけであり、些か不快である。
樹状細胞の応用自体にはケチを付ける気はないが、この療法で仮に緩解を遂げたとしても、ガン細胞にリンパ球が数的に負け、相手の増殖を許してしまうような、ガンになった患者自身の環境がそのままでは再発は免れないだろう。何度でも同じことを繰り返さねばならなくなる。ガン治療は予防と相まって旧態依然としたパラダイムを転換する必要があるはずだ。
いずれにせよ、宗旨替えはご自身の"Tumor Dormancy Therapy"に落とし前をつけられてからにしていただきたいと思う。