ユリイカ2010年12月号 特集=荒川弘 『鋼の錬金術師』完結記念特集
全体評価については的確なレビューを書かれている方がいるので譲ります。
荒川さんの対談とインタビュー、楽しく読ませて頂きました。
そのインタビュー内で、イスラム圏の外国人からのファンレターにふれ、
「宗教的には相容れないけれど、楽しく読んでいる」と書かれていたと言及しています。
その前には科学を突き詰めていく程実は宗教に近づいていくという、「神と科学」
の本を読んだ感想の発言もありました。
私も鋼を読み進むにつれて感じていた事があったのですが、その発言を読んだ時に
ストンと胸のつかえが取れた気がしました。
私は特定の宗教に所属している訳ではないですが、後半に行くにつれて
宗教によっては反発するのではないかと思っていた部分はありました。
それでも、読ませてしまう力があるというのは素晴らしい事だと思います。
イムリ 9 (ビームコミックス)
前巻で、支配民族「カーマ」の呪師階級は軍事系を掌握し、ついに総力をあげて惑星ルーンの先住民族「イムリ」の浄化と、主人公デュルクの掃討戦に突入した。
各地のイムリが抵抗むなしく囚われ、殺されて行く中を、からくも一人の少女と共に地下に逃れたデュルク。
今回は、伝説を伝え守ってきた二つの部族「洞窟のイムリ」と「岩山のイムリ」に出会うが・・・果たしてデュルクはこれまでの迷いを棄て、「イムリの兵器」を解き明かし、武装蜂起のリーダーになることができるだろうか?
一方、ノンキャリアの冷遇にも耐えて粛々と任務をこなすガラナダは、デュガロ大師の恐ろしい企みに、これまでの忠誠心を保つことができるのか?
今回も行き詰まるような展開の中、呪師衆の陰謀の道具と堕したミューバの壊れぶりが異彩を放つ。
そして、最後のページの思いがけない展開に、これまで読み続けてきた読者は「あっ!」と声を上げるだろう。
「イムリ」は全巻を通して、試練に耐える人・耐えられない人が見事に描き分けられた作品だと思う。
ペット リマスター・エディション 2 (BEAM COMIX)
一、二巻を同時に購入したのですが、こういう新装版はつい旧版と見比べてどう変わったのか知りたくなるものですよね。
以下大まかなところです。
○カラーページの追加(林さんのヤマはやっぱりカラーページで見たいですよね!)
○旧版の表紙も良かったのですが、新版の表紙は断然カッコイイ! 帯の文句も良い! 二巻では文字通り水も滴るいい男となっている司の表紙に、帯で「お願いだ、わたしの嘘を、信じてくれ」と書かれています。
○だいたい一巻につき十数ページ以上描き直されたり追加されたりしています。全体は旧版のページの端を少し切ってズームアップした感じ。しかもどうやらクライマックスを150ページ以上追加するらしいので「リマスター・エディション」ってのも頷けますね。
○追加された部分では、能力の設定や状況背景をより丁寧に説明している印象です。あとは表情をより切なくしたり、「ペット」というタイトルの意味がわかりやすくなるようにしたりといった感じです。
……ただ、私が買った二巻初版では、旧版になかった誤植が新版になって一つ増えていました。台詞の中で「悟」とならなければ意味が通じない部分が「司」になってしまっている部分です。もちろん流れの中で意味は通じますし、こんな些細なことで『ペット』の魅力が下がるはずもありませんが、気づいてしまったので一応書いておきます。
『ペット』は、山本英夫の『ホムンクルス』や今敏監督のアニメを好きな人はきっと大好物に違いないので、そういった方はすぐ買いましょう。