アンドリューNDR114 [DVD]
話題性から「A.I」の影に隠れがちですが、作品としてはこちらの方がよくできています。よくあるSFピノキオではありません。
人間とは何なのかを、ロボットという鏡に通して見せてくれます。
人間のなかには、人間でないような酷い奴も居ます。では、人間より人間らしいロボットが生まれるとどうなるのでしょうか?アンドリューは人間の持つ「愛」などの感情を感じます。そんな彼を異常として認めようとしない社会に認めてもらうため、彼はどんどんと改造をくり返し人間に近づいていきます。
アンドリューNDR114 (創元SF文庫)
人間の心を持ったロボットのお話。
アシモフの中篇「バイセンテニアル・マン」をロバート・シルヴァーバーグが長編化。
アシモフの原作も良いのだが、いかんせん字数制限のある中で描かれたものなので、描写はとてもシンプル…故にちょっと食い足りない。
だが、この作品はそれを上手に補い、また主人公ロボット「アンドリュー」の人間味も増している。
アシモフの作品中に登場するロボットは、大体がとてもロボット然としている。だからこそ魅力的でもあるのだが、アンドリューはその壁を易々と超え、人間らしい親しみを込めた仕草で、こちらに手を差し伸べる。それが読んでいて嬉しい。
序盤の「いってみれば、好奇心の問題である。」という一文には思わずにやっとしてしまった。
アンドリューが服を着て、図書館に本を借りに行こうとするくだりはとても可愛らしかった。自分の思いつきに舞い上がり、電位(ポテンシャル)が跳ね上がるのを感じるアンドリュー。これほど感情豊かなロボットは、私が今まで読んだアシモフ作品には出てこなかった。
ロボット然としたロボットの代表格、「R・ダニール・オリヴォー」も大好きだが、彼とは正反対のアンドリューも同じくらい大好きになってしまった。
人間の心を持つが故に、人間になりたかったアンドリュー。彼が最後に選んだ道に、涙が零れました。
気になった方は、ぜひ「ダニール」シリーズを読んで、ロボットロボットしたダニールの性格にどっぷり浸った後でこの作品を読んで下さい。その落差が気持ち良いです。
バイセンテニアル・マン 「アンドリューNDR114」オリジナル・サウンドトラック
ジェイムズ・ホーナー(James Horner)という作曲家の魅力を見事に伝えるのが、ここに収録されているThe Gift of Mortalityという作品である。
6分程の作品であるが、そこには、深い静けさと優しさを湛えた眼差しで、人生の最後を見つめる作曲者の目に映じる生の無限の輝きと愛おしさが綴られている。
1980以降、ハリウッドの映像音楽の作曲家として、第1線で活躍をつづけるホーナーであるが、このところ、残念ながら、職人性だけが目立ち、その根源的な創造性の減退を危惧させる作品がつづいているが、しかし、その実力はやはり突出していると思う。
シンプルな旋律のなかに無限のニュアンスを籠めたこうした作品にはその一端が刻印されている。